Twin's Story 3 "Mint Chocolate Time"

《5 無人島》

 

「ん?」最初に目を覚ましたのはケンジだった。

「どうしたの?」目を擦りながらマユミも起き上がった。「あれ、島に着いてる」

「よし、上陸だ、マユ」

「うん」

 

 その小さな島はこんもりとした森でできていた。周りは黒い岩場があったり砂浜があったりした。砂浜からは元いたビーチが見える。

「それほどビーチからは遠くないみたいだ」

 マユミが言った。「ケン兄、あたし喉渇いた」

「俺もだ。なんか持ってくるんだったなあ、飲み物……」ケンジは少し考えた後言った。「よし、探検だ。森に入ってみよう。マユはここにいな」

「いや。いっしょに行く」

「おまえの嫌いな蛇やらトカゲやらがいるぞ、きっと」

「あたしの大好きなケン兄といっしょだもん。平気だよ」

「マユ……」にっこり笑うマユミを見てきゅんとなったケンジは、思わず彼女の身体を抱きしめた。「マユっ!」

 

 

 森の中は、ケンジが思った以上に足場が悪かった。

 ケンジはマユミの手をとって慎重に先を歩いた。島の中心部に近づくにつれて、少し険しい岩場になっていた。「ん?」ケンジは立ち止まった。

「どうしたの?」

「水の音がする」

「本当?」

「こっちだ、マユ」

 

 ケンジはマユミの手を引いて、その音のする方に足を進めた。

 

 

「ううむ……」見上げる程の高さに小さな小さな滝があった。滝というより、ちょろちょろと落ちてくる水の一筋と言った方がよかった。「マユはここにいな」

 

 ケンジは注意深くその滝を目指して、岩場を登り始めた。何とかたどり着くと、その水を口で受け止めた。

「どう? ケン兄。飲めそう?」

「大丈夫そうだ。というか、なかなかうまい。でも……」

「でも?」

「この水をおまえに飲ませてやりたいけど……」

「あたしそんなとこまで登れないよ」

「そうなんだよな。どうしたもんかな、何かコップ代わりになるもの、ないかな……」ケンジは辺りを見回した。

 

「ケン兄、」

「ん?」

「あたしに口移しで飲ませてよ」

「ええっ!」ケンジは一気に赤くなった。「くっ、くっ、口移しっ?!」

「もう我慢できないー、早くー、ケン兄ー、水飲ませてよー」マユミは甘えた声を出して、わざとだだをこねて見せた。

「よしっ!」

 

 ケンジは一度水を口に含み、ガラガラガラ……ペッ!  うがいをした。そしてもう一度水を口に含み、グジュグジュグジュッ……、ペッ! うがいをした。

 

「……ケン兄、何してんの?」

「い、いや、これがエチケットってもんだろ」ケンジは赤くなったまま言った。

 

 マユミはそんなケンジを見上げて頬を赤らめ、幸せそうな笑みを浮かべた。

 

「よしっ! いくぞ、マユっ」

「いや、そんなに気合い入れなくてもいいから……」

 

 ケンジはほっぺたを膨らませられるだけ膨らませて、水を口に含んだ。そして急いで岩場を降りた。

「ん、ん、ん、」ケンジはマユミの肩に手を置いた。マユミがツバメの雛のように口を突き出し、大きく開いた。ケンジは唇をすぼめて、マユミの口に中の水を注ぎ込んだ。マユミは喉を鳴らしてその水を飲んだ。

 

 口から溢れた水を手で拭って、マユミは微笑みながら言った。「お代わり」

「よしっ!」ケンジは再び岩場を昇り、水を口にいっぱいに含んで、ほっぺたをリスのように膨らませて降りてきた。「ん、ん、」そして今度はマユミの両頬に手をあてがって唇をすぼめ、水を彼女の口の中に注ぎ込んだ。

 

 マユミは喉を鳴らしてその水を味わった。「ありがとう、ケン兄。ほんとにとっても美味しい水だね」

 マユミがそう言い終わった瞬間、ケンジはいきなりまた自分の口で彼女のそれを塞いだ。

「んんんっ!」マユミは呻いた。

 ケンジは一生懸命になってマユミの唇や舌を吸い、背中に回した腕で強く抱きしめながら自分の舌を彼女の口の中に差し込んだ。

 

 やっと口を離したケンジが言った。「マ、マユ……、お、俺……」ケンジがもじもじし始めた。両手で股間を押さえてますます赤くなっている。

「ふふっ、ケン兄ったら、口移しで興奮したんだね」マユミはケンジの手を取った。そしてそっと水着のブラ越しに自分の乳房にあてがった。小さな水着の中でケンジのペニスはすでにはち切れそうになっていた。

 

 

 二人はビーチの見える浜に戻り、抱き合って再び熱いキスシーンを繰り広げた。マユミの身体も次第に熱くなってきた。ケンジはマユミの唇を舐め、その舌を口の中に差し込んだ。マユミはそのケンジの舌を吸い込み、自分の舌を絡ませた。

 

 空がにわかにかき曇り、ぽつぽつと大きな雨粒が落ち始めた。ゴロゴロと雷鳴も轟き始めた。

 

「あ……」

「雨だ」

 

 ザザーッ! すぐにそれは土砂降りになった。辺りは激しい水しぶきで白く煙った。

 

「気持ちいいね、ケン兄」

「そうだな。マユ、このまま……」

「うん。ケン兄、横になって」マユミがケンジの耳元で囁いた。ケンジは黙って頷いた。

 

 砂に仰向けになったケンジにマユミは激しい雨に打たれながら覆い被さった。そしてまた二人は貪るようにキスをした。マユミは自分でブラを取り去り、自分の身体を滑らせながらケンジの水着に唇を這わせた。「あ……」そしてゆっくりとその小さな水着を脱がせた。中で窮屈そうに収まっていた彼のペニスが一気に解放され、跳ね上がった。マユミは静かにそれを口に含んだ。「ううっ……。マ、マユ、お、俺にも……」

 

 ケンジの意図を察したマユミは身体の向きを変え、ペニスを咥えたままケンジの顔に自分の秘部を近づけた。ケンジはマユミのビキニを脱がせ、谷間に舌を這わせ始めた。「あ、ああっ……」マユミがペニスから口を離し小さく叫んだ。ケンジの舌先が彼女のクリトリスと谷間を行き来する度に、マユミは身体を震わせて喘いだ。そしてまたケンジのペニスを咥えた。

 

 マユミは頭を前後に動かし、ケンジのペニスを自分の口に出し入れした。

「ん、んんっ!」

 ケンジは豊かに潤ったマユミの秘部を舌と唇で刺激しながら呻いた。

 

 ピカッ! 稲妻が空に走り、次の瞬間、耳をつんざくほどの雷鳴が鳴り響いた。ケンジはマユミの身体をきつく抱きしめた。ずぶ濡れになりながら二人はお互いのものを口を使って愛おしみ、身体が熱くなるのに合わせてその動きを次第に速く、激しくし始めた。

 

「んんんーっ!」ケンジが呻く。「む……んんっ、んんんーっ!」マユミも呻く。

 

 ザアザアと降りしきる雨……。雷の音……。

 

 次の瞬間、二人の身体が大きくビクンと跳ね上がった。

 

 びゅるるっ! びゅくっ! びゅくっ! ケンジが勢いよく射精を始めた。マユミは今度は口を離さなかった。「んんんんんーっ! んっ! んっ!」ケンジは呻き続ける。口の中にたたきつけられるように放出され続けるケンジの熱い精を、マユミは目を閉じ、味わった。そして射精の反射が収まると、彼女は口を離してそれを一気に呑み込んだ。

 

 二人の身体を容赦なく雨が打ち付け続けた。自分の身体から身を離したマユミをケンジは強く抱きしめた。そうして彼女の口を自らの口で塞ぎ、唇、舌を舐めた。

 

 口を離したケンジは、大声で言った。「マユ、マユ、ごめん、ごめんマユ、俺、が、我慢できずに……」

「やっとケン兄の、飲めた。あたし嬉しい」

「こんなつもりじゃなかったんだ、マユ、マユ、ごめん」

「もう、いいかげんにしてよ、ケン兄。あたしそんなにヤワじゃないからね」

「マユ……」

「もうそろそろいいじゃん。これもエッチの発展形だよ」

「でも、すっごい罪悪感がある」

「だから平気だってば」

 ケンジは上目遣いでマユミを見た。「ま、まずかっただろ?」

 マユミは少し考えて言った。

「へんな味だし、変わったにおい。でもいやじゃないよ、あたし」

「どうして?」

「大好きなケン兄の中にあったものだしね。それになんか、ケン兄を独り占めにできてる、っていう幸福感があるよ」

「そ、そうなんだ……」ケンジは申し訳なさそうに鼻の頭を掻いた。

「それに、」マユミは口角をあげた。

「え?」

「強烈な勢いで大量に発射されて、あたし溺れそうだったよ」

「ご、ごめん……」

「ううん。大丈夫。ケン兄って、いつも優しく抱いてくれるけど、出し方は力強くて攻撃的。さすが男の人って感じだよ。あたし、なんだか燃えちゃった。ひょっとしたらあたしM傾向なのかも」

 

 ケンジは眉を下げて、マユミの手を取った。

「もうしないから……」

「あたしがお願いしたら、またちょうだい」

「お、お願い……するのか?」

「ケン兄が口移しで飲ませてくれる水と同じ。乾いたらまたお願いするから」

「マユー」またケンジが情けない声を出した。

 

 

 ビーチを出て、ケンジたちの乗ったゴムボートから離れて島の反対側まで泳いできた時、ケネスは頭にぽつぽつと雨粒が落ちてきたのを感じた。彼は島に上陸した。そしてそこで雨が止むのを待つことにした。

 

 間もなく雨は本降りになった。その雨の中ケネスは波打ち際を歩いて、ビーチの見える場所を目指した。

 

 しばらく歩くとごつごつした岩の陰から砂浜が見えてきた。そこにはゴムボートが引き上げられていた。

「ケンジたち、島に流れ着いたんやな」

 雨に煙ったそのボートの手前で、男女が全裸で身体を重ね合っている姿が見えた。彼らはお互いの秘部を口で愛撫し合っていた。ケネスは立ち止まり、その光景を見つめた。ケネスの股間は熱くなり、水着の膨らみを次第に大きくした。彼は我慢できず自分の水着を膝まで降ろすと、右手で大きく怒張したペニスをつかんで扱き始めた。

 

 やがて二人の身体が同時にビクン、と脈打ち、大きな呻き声が聞こえた。

「うっ!」ケネスが小さく呻いた。

 

 びゅるるっ! びゅくっ、びゅくっ! びゅくびゅくびゅく……。ケネスの精液は土砂降りの雨の中勢いよく飛び、、浜の砂に吸い込まれた。

 

 身体を離したマユミの身体をケンジが強く抱きしめ、荒々しいほどのキスを浴びせ始めた。

「ひょっとして、マーユの口の中に出したんか?」ケネスは水着を穿き直した。「マーユも大胆なこっちゃな」

 

 彼はその場に腰を下ろして二人の事後の慈しみ合いを満足したように眺め続けた。

 

 

 さっきまでの土砂降りが嘘のように、空から雲が追い払われた。眩しい夏の太陽の光が、雨に濡れた森をきらきらと輝かせた。

 

 ケンジとマユミは髪まで濡れそぼった身体を寄り添わせて波打ち際に座っていた。穏やかな波が二人の脚を優しく撫でている。

「きれい……」マユミが言った。

「あっちの海岸からは見えなかっただろうなあ……」

 

 通り過ぎた雨が、ビーチの方角の空に大きく鮮やかな虹を描いていた。

 

「ケン兄と二人だけでこんなものが見られるなんて思ってもいなかった」

「そうだな」

「何だか日本じゃないみたい」

 ケンジはマユミの肩に手を置いた「いつき行きたいよな、フロリダとかハワイとか、グアムとか……」

「行きたい。でも、あたし英語だめだよ、ケン兄もでしょ?」

 

「それはわいに任せとき」不意に背後から声がした。

 二人はびっくしりて振り向いた。

 

「ケニー!」

「おまえ、なんでこんなところに?」

「結構前からいたで。雨が降り出したんで、上陸して雨宿りしとった」

「そうか。雨宿りな」ケンジは微笑んだ。「えっ?!」

 急に表情を変えたケンジが言った。「ま、まさかケニー、おまえさっきの、俺たちの、その、あ、あれを、見てた……とか」

「ああ。見さしてもろたで。ええもんやなあ、愛し合う二人の姿は実に美しい」

「そ……」ケンジは真っ赤になった。

「見てたんだー、ケニー。興奮した?」

「そりゃもう。わいも我慢できずに一人でイってもた」

「一声かけてくれれば……」ケンジがぽつりと言った。

「あほ。あの状況で声かけるほど、わい無粋やないで。そやけど、」

「何だよ」

「わいに見られてるってわかってエッチしたら、もっと燃えたかもしれへんで?」

「そうかも」マユミが言った。

「えっ?! マユ、見られるの平気なのか?」

「何だか、違う意味で燃え上がりそう。きっとケン兄もそう感じるよ」

「ほな、今度はわいの見てる前でやってもらおかな」

「そ、それは……」「やってみよ」ケンジとマユミが同時に言った。

 ケンジはまた赤くなってうつむいた。

 

「ほんまラッキーやったな。こんなきれいな虹が見られるとはな」

「まったくだ」

「さっきも言ってたんだよ。南国のビーチみたいだって」

「ほんで、ハワイとかグアムとかに行きたい、言うてたみたいやな」

「そうなんだ」

「二人の通訳としてわいが同行してもええか?」

「大歓迎だ。おまえが一緒だったらどこへでも行けるからな」

「それに、ハワイに行って、ケンジが劣情の波に呑み込まれてマーユに手え出さんように、わいが見張っとかなあかんもんな」

「大きなお世話だ」

 

 三人は笑い合った。

 

 

「さて、陽が落ちる前にビーチに戻るとするかな」

「そうだね」

「ほな、わいはまたこっから泳いで帰るよってに、二人で仲良うボートで戻り」ケネスはそう言い残して、海に入っていった。

「マユ、帰ろう」

「うん」

 

 ケンジはマユミに優しくキスをしてから手を取って先にボートに乗せ、海にゆっくり押し出して自分も乗り込んだ。