Twin's Story 5 "Liquor Chocolate Time"~Epilogue

《7 懐古》

 

「この店すっごく懐かしいね、ケン兄」

「本当だな。17年ぶり、だっけ?」

「あたしたちが18の誕生日だったからね」

 

 ケンジとマユミは街の一角にある喫茶店の小さなテーブルをはさんで向かい合っていた。

 

「このサンドイッチの味、変わってない。そう思わないか? マユ」

「そうだね。あの時もとってもおいしいって思って食べたよ、あたし」

「俺も」

「お金が足りなくて、仕方なく食べたんだよね」

「そうだったな」

「でも、ケン兄、なんで今日は紅茶? いつもはコーヒーなのに」

「急に思い出したんだ」

「何を?」

「高二の時、俺がお前に初めてチョコを食べさせた時のこと、覚えてるか?」

「覚えてる! そうか、あの時はあたし、下で紅茶淹れて持って来たんだったね」

「そうさ」

「ケン兄紅茶はあんまり飲まなかったよね」

「渋いのが苦手でね。でも今は大丈夫。結構飲むようになったんだ。ミカも好きだし」

「そうなんだ。じゃあ、あの時は無理して飲んでくれてたんだね」

「味なんて覚えてないよ。あの時はもうすでに俺、前に座ったお前にどきどきしてたからな」

 

「本当に? 知らなかった」マユミは嬉しそうに言った。

 

「あの時お前、俺の部屋にハンカチ忘れてったろ?」

「そうだったね」

「お前が部屋を出た後、俺さ、お前の座ってた場所に座って、お前の温もりを感じてどきどきしたり、」

「わあ! ケン兄純情っ!」

「高二の男子だぞ。そんなもんだ」ケンジは少し赤面した。「お前の使ったカップに唇をくっつけて、ますます興奮した」

 ケンジはそう言って、飲みかけのマユミのティーカップを手に取り、マユミの口紅がうっすらとついた縁に、あの時と同じように唇を当てた。「こんな風にさ」

「今もどきどきした?」

「ちょっとだけ」

 

 二人は笑った。

 

「その晩、あたし夜中にケン兄の一人エッチ見ちゃったんだ。ハンカチといっしょに鼻をこすりつけてたの、あのショーツだったんでしょ?」

「もう、お前のショーツ、どんな雑誌やビデオより興奮するアイテムだったぞ」

「ケン兄のエッチ」

 二人はまた笑った。

「でもさ、マユ、おまえあれからずっと俺に付き合ってコーヒー飲んでたけど、かなり無理してたんじゃ?」

「始めのうちはね。でも、好きな人と一緒にいられる時間だったから、その内砂糖やミルクなしでもとっても美味しく感じられるようになったんだよ。このサンドイッチみたいにね」

「そうなのか」ケンジは嬉しそうに微笑んだ。

 

「あたしたちのお部屋デート、楽しかったね」

「うん。楽しかった」

「考えてみれば、あたしたちさ、」

「うん?」

「夜はずっとどっちかの部屋で暮らしてたよね」マユミがおかしそうに言った。

「そうだな。あれ以降それぞれの部屋で寝ること、ほとんどなかったからな」

「勉強さえ、どっちかの部屋でやってたもんね」

「お前と一緒にいると、本当に癒された。心が落ち着くっていうか……」

「あたしも。そして最後は一緒に抱き合って眠った」

「もう、最高に気持ちのいい時間だった」

「おかげで二人とも早起きの習慣がついたよね」

「そうだったな。もし母さんが起こしに来たら、って思ってたからな」

 

「そう言えば、危なかったこと、一回だけあったね」

「そうそう。母さんの階段を昇ってくる足音が聞こえたときは、飛び起きたな」

「抱き合ってたもんね。二人ともハダカで」

「あの時の俺の早業は伝説もんだ」

「うん。ケン兄飛び起きて下着も穿かずにジャージの下だけ穿いてママが上がってきたとたん、ドアを開けたよね」

「その間、ほんの数秒」

「あたし、ベッドの陰にちっちゃくなってた」

「あの時、ちょっとでも遅かったら完全にアウトだったな」

「それからベランダの鍵を開けたまま寝るようにしたんだったっけ」

「そうそう。いつでも自分の部屋にベランダから戻れるようにな」

「ケン兄、あの日の朝ご飯の時、ママにくってかかったよね。勝手に上がってくるな、って」

「くってかかったっけ?」

「そうだよ。あたし覚えてる。すごい剣幕だったよ。『俺たち、ちゃんと自分で起きられるから、余計なことすんなよな! 』って言った」

「そんなにきついこと言ったかな……」

「言った」

「で、でもまあ、それ以後、母さんが朝から二階に上がってくることはほとんどなくなったから……」

「知らないと思うけど、ケン兄が先に出かけた後、あたし、しょんぼりしていたママに言ったんだよ」

「え? 何て?」

「あたしたち、もう子どもじゃないから、自分のことは自分でやるし、寝坊したら自分で責任とるから、心配しないで、って」

「そ、そんなに落ち込んでたのか? 母さん」

「当たり前だよ。ケン兄がママにあんなにきつい口調で言ったの初めてだったじゃん」

「そ、そうだったのか……。悪いことしたな……」

「でも、それが最初で最後だったからね」マユミはにっこりと笑った。「普段はとっても親思いのケン兄だったから」

「ちょっと反省。俺、自分のことしか考えていなかったんだな。あの頃」

「そんなもんだよ。思春期だったんだから」

 

「さてと、」ケンジは紅茶を飲み干すと、テーブルの注文票を手に取った。「出ようか、マユ」

 

 

「ケン兄、まだあたしを抱いて満足する?」

「するする。当たり前だろ。年に一度のお前とのこの時間は俺にとっては今でも最高の癒しだ」

 

 街なかのシティ・ホテルの一室でケンジとマユミは語らっていた。

 

「あの日のプレゼント、まだ持ってる?」

あのペンダントはお前んちだろ?」

「そうか、そうだったね。結婚する時あたしたちの思い出の品は全部ケネスが引き取ってくれたんだった」

「まだとってあるのか?」

「天井裏の箱に入ってるよ」

「そうか」

「そのうち、健太郎と真雪にあげようかな、って思ってる」

「そりゃあいい!」

「あの子たちに、私たちの昔話を話せるのは、いつになるかなあ……」

 

「まさかさ、マユ、」

「ん?」

「健太郎と真雪も俺たちのように内緒でつながってたりしないだろうな……」

「そうなってたら、どうする?」

「さりげなく訊いてみるかな、今度のスクールの日あたりに」

「え? 何て訊くの?」

「『お前、妹をどう思ってるんだ? 』とかさ」

「そんな訊き方じゃ、ホントのこと言わないよ」

「それもそうだな。大人には本当のこと、言うわけないか」ケンジは頭を掻いた。

「あたしたちといっしょだよ」マユミもケンジも笑った。

 

「そうそう、あの箱にはチョコの空き箱も山ほど入ってるんだよ」

「え?」

「ケン兄があたしに買ってくれたチョコの空き箱」

「そんなものまでとってたのか」

「だって、捨てられないよ」マユミが微笑んだ。そして続けた。「もう一つの誕生日のプレゼントは?」

「今穿いてる」

「嬉しい。実はあたしも」

「じゃあ、見せ合って確認しよう」

「もう、ケン兄のエッチ」

 

 二人は着衣を脱ぎ、ショーツだけの姿になった。

 

「ケン兄の体型、全然あの頃と変わらないね」

「お前も」

「えー? 無理があるよ。あたしたちもうすぐ36になるんだよ。それに二人の子持ち」

「俺の中では、お前はあの時のままだ」

「ケン兄……」

 

 ケンジはマユミの身体をそっと抱き、広いベッドに横たえた。そして身体を優しく重ね、キスをした。「でも、よくもまあ、あんな一人用の狭いベッドで抱き合ってたもんだよな」

「ほんとだね。あたしはともかく、ケン兄は身体が大きかったから、無理してたんじゃない?」

「あの頃はほとんど気にならなかったよ。お前に夢中で」

 

 マユミは下からケンジの首に腕を回した。

 

「お前のこの動作が、スタートの合図だったな」

「え? そうなの?」

「そうさ。え? わざとやってたんじゃないのか?」

「ううん。でも、ケン兄と始める時に、無意識でやってたのかも……」

「俺、ずっとそう思ってた」

「来て、ケン兄……」

「うん」

「あたしといっしょにいこ」

「あの頃のように……」

 

 

 ケンジはまたマユミと唇を合わせた。「ん……」マユミがキスをされて小さく呻く声はあの頃のままだった。ケンジはいつもその声でだんだんと身体を熱くしていったものだ。ケンジはマユミの唇を舐め、舌を吸い込んだ。「ん、んんーっ……」ケンジの身体が熱くなってきた。彼はそのまま手をマユミの乳房に伸ばし、人差し指と中指で乳首を挟み込み、刺激した。「んんんっ!」

 

 やがてケンジは唇を彼女の首筋、鎖骨、乳房へと移動させ、乳首を捉えた。「ああっ!」マユミはのけぞった。長い時間、ケンジはマユミの二つの乳首を交互に舌と唇で愛撫した。マユミの息が荒くなり、その白い身体を波打たせ始めた。

 

 ケンジはマユミの脚を広げ、ショーツ越しにその陰部をこすりつけ始めた。「あ、あああん……」

 

「マ、マユ、今になってこんなこと訊くのもなんだけど、」

「なあに?」

「こうして下着を穿いたままでこすりつけ合うのって、どうなんだ?」

「最初は変な感じだったけど、ケン兄が毎回してくるからあたしも何だか好きになってた。というか気持ちよく思えるようになってたんだよ」

「早く入れて欲しい、って思わなかった?」

「そのもどかしさが、ちょっといい感じだった、かな」

「そうか」

「ケン兄はショーツフェチだからね」

「違うね。俺はお前のショーツにしか興味ないから」

「ベッドに隠してた興奮アイテムのあのショーツ、どうしたの?」

「おまえんちにあるよ。あの箱の中に」

「え? そうなんだ。まだ持ってるって思ってた」

「それじゃロリコンだ。あれはキホン一人エッチのアイテムだ。お前が抱けるのに持っている必要はないだろ」

「でも、最後まで隠してたじゃん。あたしとのお別れの夜にはあたしに穿かせたりもしたし」

「いずれにしても、俺にとっては特別なものだったのさ」

 

 ケンジはマユミの黒いTバックショーツをゆっくりと脱がせた。そしてマユミの秘部に顔を埋めた。「あああ……」

「お前の匂い……あの頃と全然変わらない……」

「ケン兄……」

 ケンジは舌を谷間に這わせ、中に差し込み、縁を舐めあげてはクリトリスを唇をすぼめて吸った。「ああ……だめ、ケン兄……あたし、もうイきそう……」マユミの興奮が急に高まり始めた。ケンジは長い腕を伸ばし、小柄なマユミの乳首を指でつまんで愛撫した。マユミはさらに身体を激しく震えさせた。「イ、イっちゃうっ! ケン兄、ケン兄っ!」びくびくびくびくっ!

 マユミの身体が大きく波打ち、彼女は興奮に呑まれたかに見えた。しかし、マユミは自分の息が収まるのを待たずに、ケンジから身を引き、身を翻して雌豹のようにケンジを組み敷いた。そして仰向けに押さえつけたケンジの口を自分の口で包み込んだ。ケンジの口の周りはマユミの愛液で光っていた。彼女は獲物を味わうように、ケンジの顔中をなめ回した。「んんっ! マ、マユっ! んん……」ケンジが何か言おうとしたが、その都度マユミに口を塞がれて言葉にならなかった。

 

 マユミはケンジの両腕を手で押さえつけ、太股にまたがり体重をかけた。はあはあと収まりきれない荒い呼吸を繰り返しながら、マユミはケンジの目を見つめてにっこりと笑った。

 

「マ、マユ、お前今日は何だか激しいな。何というか、こう、動物じみてるって言うか……」

「ケン兄を征服したいんだ」

「征服?」

「あたしね、あの頃も、実はこういう欲求があったんだよ」

「ほんとか?」

「ケン兄をいじめてみたい気持ちが。ちょっとね」

「へえ」

「だって、いつもあたしケン兄のペースでセックスしてたような気がしてたから」

「お前が上になってイくのは、俺好きだったよ」

「あたしも好き。でも、あれってケン兄はもどかしくない? 思うように動けないでしょ?」

「いや、あのポジションはお前のきれいなハダカが上気して、赤く染まって、少し汗ばんだりして、俺のペニスに感じながら喘ぐ姿が見られるから大好きだった」

「あたしもケン兄に見られることで興奮していたのかも……」

 

「で、ここからどうするんだ? マユ」上になったマユミを見上げながら、ケンジがにやりと笑って言った。

「こうするんだよ」マユミはケンジの白いTバックを荒々しくはぎ取った。そして彼のペニスを手で力いっぱい握りしめた。そして薄いピンクのマニキュアが塗られた爪を立てた。

 

「あっ! い、痛い!」ケンジは眉を寄せて呻いた。

 

 マユミはそのままペニスの先端を舐め続けた。そしてしばらくして亀頭に軽く歯を立てた。「いっ!」ケンジは激しく仰け反って呻いた。

 マユミが口を離し、強く握っていた手を離すと、ケンジのペニスの先端から透明な液がぴゅっと迸った。

 

「いつもより興奮してない? ケン兄、意外にMだったんだね」

「ち、違うよ、俺は、ううっ!」マユミがペニスを激しく吸い込んだ。そして根元に手を添えて大きく口を上下に動かし始めた。「マ、マユっ!」ケンジの身体がじんじんと痺れ始めた。「だ、だめだ! マユ、マユっ!」マユミはさらに大きく口を動かした。

 

「イくっ! マユ、マユーっ!」

 マユミはケンジのペニスを握りしめたまま口を離した。

 

 びゅるるっ! びゅくん、びゅくん、びゅくん! ……マユミはケンジのペニスを自分の顔に向けた。「あああああーっ!」ケンジが叫び続ける。びゅくん、びゅくん、びゅくっ! ……大量の生温かい精液がマユミの顔や髪にまつわりついた。マユミは脈動を続けているペニスを再び咥え、滲み出る最後の液を舐め取った。

 

「な、何てことするんだ! マユ!」ケンジは真っ赤になって抗議した。

「ふふっ。やってみたかったんだ、こういうの」

 顔と髪をケンジの精液でどろどろにしたまま、マユミは微笑んだ。「でも、相変わらずいっぱい出すね、ケン兄。思春期の高校生並みだよ」

「は、早くふけよ。俺、見てらんない、お前のそんな姿」

「えー? オトコの夢じゃないの? 顔射や髪射って」

「俺はいやだ。特にマユにはかけたくない。AVそのものじゃないか」

「あたし、夢の中でケニーにこういうことされてから、ずっと興味があったんだ」

「え? あの夢の?」

「そうだよ。でも今、実際にやってみたら、意外といいかも、って思っちゃった」

「やめてくれ~」ケンジは泣きそうになった。

「いつまでたってもシャイなんだから、ケン兄」

次のページへ