Twin's Story 7 "Milk Chocolate Time"
-第2章 3《初めて一つに》-
『オーク』の部屋のテラスに龍と真雪は肩を抱き合って立っていた。
「すごい! こんなにたくさんの星を見たの、あたし初めて」
「僕も」
「天の川まではっきり見えるね」
「ほんとだね。こうして見ると、本当にミルキーウェイって感じがするね」
「ゼウスの妻、ヘラのお乳が流れた跡、なんだよ」
「へえ、そうなんだ。マユ姉物知りだね。さすがに」
「たまたま知ってるだけだよ」
「ヘラのおっぱいって、マユ姉のとどっちが大きいのかな」
「またそんなこと言ってる」
「おっぱいが気になる年頃だから」
「気にし過ぎ」真雪は笑った。
「もっと教えてよ、星の伝説みたいなの」
「あれは、」真雪が天の川のほとりのひときわ明るい星を指さした。「ベガ。こと座の主星」
「こと座?」
「そう。ベガは別名織女」
「織女って七夕の織り姫のことでしょ?」
「そうだよ。龍くんも物知りじゃん」
「たまたまだよ」龍は笑った。「じゃあ、その反対にあるあれが彦星?」
「そう。わし座のアルタイル。牽牛星だね」
「年に一度しか会えないんだよね」
「そうだね。かつてのあなたのお父さんとうちのママと同じ」
「毎年8月3日にだけ、二人は抱き合うことを許されてた、ってケン兄言ってたよね」
「ロマンチックだよねー」
「でもさ、」龍が少し小さな声で言った。「去年のハワイから帰ってきてからは、あの四人、好き勝手にエッチしてるみたいだよね」
「知ってる。そんな気配がする」
「不思議な大人たちだよね」
「パパとケンジおじさえ、何か怪しげだもんね」
「そうだね、時々冗談のようにキスし合ってる」
「変な大人たち」
「僕たち、その子どもだけどね」
「ケン兄は今夜、ミカさんを抱かせてもらうのかな」
「たぶん間違いないと思うよ。母さんはそんな人だ」
「どんな人だよー」真雪があきれて笑った。
「今頃、きっと隣の部屋では……」
「そうか、だからケンジおじ、こないだ伯母さんと甥の禁断の恋とか言ってからかってたんだ」
「僕たちの家族って、なかなかすごい」
「はたから見たら、超すきモノ一家だね」真雪は笑った。
「確かに」龍も笑った。
しばらく二人は夜空を見上げていた。
「マユ姉、」龍が静かに口を開いた。
「なに? 龍くん」
「僕、マユ姉を尊敬する」
「え? 尊敬? いきなりどうしたの?」真雪は意外な顔をして龍を見た。
「何て言うか、こう、とっても広い人だと思う」龍は空から目を離さずに言った。
「広い? どういうこと?」
「自分の主張をちゃんと持ってるし、それを実行に移すし、僕みたいな未熟な人間をあったかく包みこんでくれるし……」
「言ってることがよくわかんないんだけど」
龍は真雪の顔を見ながら言った。「マユ姉、動物の飼育士になるんでしょ?」
「知ってたの?」
「うん。前にケン兄から聞いた」
「小さい頃からの夢だったからね」
「すごいよ。ずっとその夢を信じて、しかも行動に移してる」
「龍くんだって、写真への思いは熱いじゃない。中二でこれだけ熱中できることがあるなんてすごいことだよ」
「ま、まあね」龍は頭を掻いた。「僕ね、将来は写真家か、スポーツ記者になりたい」
「何かきっかけがあったの?」
「去年のハワイで、競泳大会やったでしょ?」
「うん」
「あの時の様子を撮った写真があったじゃん」
「そうだったね、すごくよく撮れてたよね」
「僕、誰が撮ったかもわからないあの写真の画が、ずっと頭から離れないんだ」
「そうだったんだ」
「中でも父さんを写した一枚が」
「あの写真は、確かに……」
その写真は、バタフライで泳いでいるケンジが豪快に腕をリカバリーしている瞬間を正面からアップで捉えたものだった。白く弾ける水しぶき、ゴールを見据えたゴーグル越しのケンジの目、濡れた逞しい腕の筋肉、それは泳ぐ者の闘志をも見事に写し取った、芸術的とも言える写真だった。
「僕、あんな写真が撮れるようになりたい。写っていないものまで見事に写し出したあんな写真」
「きっと龍くんにだって、撮れるよ、そんな写真」
「うん。ありがとう、マユ姉」龍は真雪の頬に右手をそっと添えて、静かにキスをした。真雪は目を閉じた。
龍と真雪はベッドの上でお互い下着だけを身につけてひざまづいたまま、向かい合って熱い口づけを交わした。「龍くん……」
龍はゆっくりと舌を真雪の唇の間から差し込んだ。真雪の舌が龍のそれを探してさまよい始めると、龍は唇でそれを挟み込み、自分の舌先で慈しんだ。
「んん……」真雪は小さく呻いた。
龍はゆっくりと真雪を横たえた。そして静かに身体を重ねた。彼は真雪のうなじに舌を這わせ、鎖骨を経由して乳房へ進めた。そしてそっと彼女の左の乳首を舐めた後、口を大きく開いて包みこむようにその乳首を吸い込んだ。「ああん、りゅ、龍く……」
龍の左手の指が真雪の右の乳首をつまみ、こりこりと刺激した。「んんんっ!」真雪は身体を震わせて喘ぎ出した。
龍は真雪の脚を大きく開かせた。そして下着越しに自分の膨らみを彼女の秘部に押し当て、こすりつけ始めた。「あ……ああ」少しずつ動きを大きくしながら龍はまた真雪の乳首を吸った。
しばらくして真雪から身を離した龍は、彼女の白いショーツをゆっくりと脱がせた。そして自分の短い下着も脱ぎ去った。二人は生まれたままの姿に戻った。
龍はもう一度真雪に身体を重ね、背中に腕を回し、きつく抱きしめながらじっと真雪の目を見つめた。
「真雪……」
真雪の目に涙が滲んだ。
「龍……」
次の瞬間彼女は龍の唇に自分の唇を押しつけ、強く吸った。上唇を舐め、舌を吸い込み、自分の舌を絡ませた。腕を彼の首に回し、自分の口に彼の唇を簡単には離れないように強く押しつけた。「んんんっ……」龍は呻いた。
はあはあはあ……。真雪は激しく喘いでいた。「ああ、龍、龍!」真雪はまた龍の身体を抱きしめた。「真雪!」龍もそう叫ぶと再び唇を重ね合わせた。そうして二人は永遠とも思える時間、お互いの名を呼び合い、唇をむさぼり合った。
「真雪、お願いがあるんだけど」
「何?」
「僕の上になって」
「え?」
「僕、馬になる。真雪の、馬になりたい」
「龍……。わかった。いいよ」
「あ、その前に、」龍は身を起こして、自分の荷物に手を伸ばした。「忘れるとこだった」
「いいの、大丈夫だよ、龍」
「え?」
「今日はあなたをそのまま受け入れられるよ」
「ほんとに?」
「うん。今は大丈夫」
「いいの? 真雪の中に出しちゃっても」
「あなたのすべてが……欲しいの……」
「真雪……」
真雪は龍を仰向けに寝かせた。そして大きくなってビクンビクン、と脈動しているペニスに手を添えた。
「すごい、龍、もう一人前みたい」彼女は愛しそうにその温かく硬いものを見つめた。
「真雪、あんまり見ないでよ。恥ずかしいよ」龍は照れた声でそう言った。
「あたしも一人前になれるかな……」真雪はそう言うと、そっと龍のペニスに舌を這わせた。
「あっ!」龍は慌てて顔を上げた。「だめっ! だめだ! マユ姉!」
「子どもに戻っちゃダメ! もう『マユ姉』なんて呼ばないで」真雪はそう言って龍のペニスを咥え込んだ。
「ああああ……! 真雪、真雪っ!」龍は激しく喘いだ。「ま、まだイかせないで、お願い!」
真雪は口を離した。龍はすでに肩で激しく息をしている。「急展開すぎるよ、真雪」
「ふふっ、気持ち良かった?」
「君より先にイっちゃったらどうするんだよ」
「いいじゃない。イっちゃっても」
「いやだ。真雪といっしょにイく!」龍はそう言って真雪を仰向けにした。そして彼女の脚をまた大きく開かせ、舌をその秘部に這わせ始めた。「あ、ああああん……」真雪は仰け反った。
龍は唇で谷間をなぞり、舌でクリトリスを刺激した。その行為を続けながら彼は右手の指を一本、谷間に入り込ませ、中で第一関節を折って内壁を優しくさすり始めた。「ああ、あああああっ!」真雪は激しく身体を波打たせ始めた。「龍、龍っ!」真雪はとっさに龍の頭を両手で挟み込んだ。「い、入れて、龍、お願い。あたしの中に来て!」
龍は再び仰向けになった。真雪は彼の腰に跨がり、ペニスを両手で掴んで自分の秘部に押し当てた。龍は真雪の谷間に自分のものが到達したことを確認すると、腰を上に突きだして真雪の身体をその持ち物で貫いた。「ああっ!」真雪が叫んだ。
「真雪っ! 僕の、僕の上で動いて!」龍が言った。
真雪は身体を上下にリズミカルに動かし始めた。龍はうっすらと目を開けて自分の上で喘ぎながら身体を揺さぶっている真雪を見た。昼間、乗馬をしていた真雪と同じだ、と彼は思った。そして二人の身体の中から熱く沸騰したものが一気に湧き上がってきた。
「あ、ああああっ! 龍、龍っ! あ、あたしっ! も、もう、イく、イっちゃうっ!」真雪は自分の乳房を両手で鷲づかみにした。
「ぼ、僕もで、出る、出るっ! 真雪っ! 真雪ーっ!」龍は激しく身体を仰け反らせた。
びゅるるるっ!
「ああああああ!」「ぐううううっ!」二人は同じように身体を硬直させた。
熱く沸騰した龍の真雪への想いが、強烈な勢いで彼女の身体の奥深くに噴き出し続けた。
◆
「今夜があたしたちの本当に結ばれた日、だね」
「え? どうして?」
「龍の身体の中で作られたものを、あたしがちゃんと受け止められた」
「そうか。そうだよね」龍は照れたように笑った。
二人はまだつながったまま抱き合っていた。
「僕、今とっても幸せな気分だよ」
「あたしも」
「真雪を本当に自分のものにできた、って気がする」
「あたしも」
龍は真雪の髪を優しく撫でた。
「実はね、真雪」
「何?」
「僕、今までは、セックスしたくて君と付き合ってるのかも、って思ってた」
「男のコだからね」
「でも、今は他の子に誘惑されても断る自信がある」
「変な自信」真雪は笑った。
「本当さ。真剣にそう思うよ。もっとも僕を誘惑する女子がいるとは思えないけど」
「と思うでしょ?」
「え?」
「実は龍は大人気なんだよ。あたしの高校の友だちの間で」
「な、なんで真雪の友だちが僕のこと……」
「時々龍、あたしの店に来たりするでしょ?」
「うん」
「それに最近はあたしとよく一緒に街を歩くでしょ」
「そ、そうだね」
「この前あたしの友だちのリサとユウナに会ったじゃん。モールのプリクラの前で」
「ああ、そう言えば」
「あの時は龍のこと、いとこだよ、って紹介したよね」
「そうだったね」
「それからあの二人、龍のプリクラよこせ、ってうるさいんだよ」
「僕、プリクラ苦手」
「っていうわけで、龍はみんなのアイドルなの」
龍は頭を掻いた。「困ったな……」
「弟にしたい、かわいい、ってみんな言ってる」
龍は上になった真雪の背中に回した腕に力を込めた。「真雪はそのうち僕のこと、みんなに彼として紹介するの?」
「どうしようかなー」
「なんでそこで悩む?」
「いとこのままにしとけば、みんなに誘惑されても本当に龍がなびかないかどうか、試せるよね」
「だから、なびかないってば」
「一途にあたしを思い続けられるの? あ、ああん……」
「どうしたの?」
真雪は頬を赤らめた。「龍ったら、また大きくなってきてるよ」
「言ったでしょ。僕は真雪しか抱かないって」
龍は真雪を仰向けにして脚を開かせ、腰を前後に動かし始めた。
「あああ、龍、あたし、敏感になってる、」
「真雪、もう一度僕とイこう」
「うん。龍、龍!」
「あああ……ま、真雪、真雪っ!」
◆
夜が明けた。テラスの方から小鳥の鳴く声に混じって鶏や牛の鳴き声も聞こえてきた。
「真雪……ああ、真雪……」
真雪は、龍が自分の名をつぶやく声で目覚めた。全裸のまま眠っている龍は、無意識に横の真雪に手を伸ばした。
「龍ったら……」真雪は横向きになり、龍の身体に自分の身体を寄せた。彼の背中に腕を回し、そっと彼の胸に頬を密着させた。「あ……ああ……んっ、んっ、んっ!」龍の呻き声がにわかに激しくなったかと思うと、真雪は自分の乳房に生温かいものが次々にまつわりつくのを感じた。
「はっ!」龍が突然目を開けた。
「龍、起きた?」真雪は顔を上げて微笑みながら龍の目を見た。
「ま、真雪、」
「龍、またエッチな夢みたんだね」
「ぼ、僕、出しちゃった?」
「いっぱいね。ほら」真雪は龍から身を離して、精液でどろどろになっている自分の乳房を龍に見せた。
「ご、ごめん、真雪」龍は赤くなった。
「元気な証拠だよ」
龍は真雪の身体を仰向けにして、自分が彼女の腹や乳房に出してしまったものをタオルで拭い取った。「ほんとにゴメン、真雪」
「どんな夢みてたの?」
「そ、それは……」
「言ってよ。聞きたい」
「僕、真雪に跨がって、そ、そのおっぱいに挟まれながらイってた」
「なんだ、じゃあ現実とあんまり変わらないじゃん」真雪は笑った。「男のコって、そんなことされたいんだ」
「ぼ、僕は特に真雪のおっぱいが好きだから……」
「おっぱいフェチなんだね」
龍は静かに真雪に身体を重ねた。そして右手で彼女の左の乳房をそっと包みこんで、もう片方の乳房に舌を這わせた。「ああん……」真雪が小さく喘いだ。
「昨夜さ、」口を離して龍が言った。「僕の身体の中で作られたものを、受け止められた、って言ってたよね、真雪」
「うん」
「やっぱり違うの? ヒニング着けてエッチするのと」
「全然違うよ」
「でも、同じように感じるんでしょ?」
「身体の感じ方、というより、心理的な感じ方が違うんだよ」
「そうなの?」
「大好きな人の全てを自分のものにしたい、って思う気持ち」
「そうなんだ」
「だから、あたし、口の中に龍が出してもきっと平気」
「ええっ?!」
「いつか、龍を口でイかせてみたい」
「断る」
「えー、なんで?」
「そ、そんなこと真雪にさせられないよ」龍は赤くなって困ったように言った。
「あたし構わないよ」
「僕はいやだ。強烈な罪悪感がある」
「変なの」真雪はいたずらっぽく笑って続けた。「じゃあ、龍が寝てる時にやっちゃおうかな」
「やめてっ!」龍はますます赤くなって抗議した。
真雪は笑った。
「龍もやっぱりコンドームなしでエッチする方が気持ちいいんでしょ?」
「そりゃあね。どんなに薄くても一枚のゴムに隔てられてる、って思うと、真雪との距離をそれ以上に感じるもん」
真雪は切なそうな目で龍の顔を見た。「きゅんとくること言うね。龍」
「だからさ、昨夜初めて君と本当に一つになった時は、それまでの快感とは比べものにならないくらい強烈に気持ち良かったんだ」
「男のコもそうなんだね」真雪は嬉しそうに微笑んだ。
「え?」
「真雪のおっぱいって、吸ってもお乳、出ないの?」
「あははは。無理無理。母乳って赤ちゃん産まなきゃ作られないんだよ」
「でも、牛はいつでもミルク出してるじゃん」
「乳牛もミルクを出すためには出産しなきゃいけなんだよ」
「え? そうなの?」
「そう。だから昨日龍がミルクを搾ったあの牛も、出産後の牛ってことだね。出産後は300日ぐらいミルクが搾れるんだ」
「そうかー。じゃあ、牛乳を搾るための牛って、ちゃんとエッチして赤ちゃんを産んだ後の牛なんだね」
「牧場の牛はエッチしないんだよ」
「え?」
「人工交配って言って、人工的に妊娠させるの」
「牛ってつまんないだろうね。僕人間で良かった」
真雪は笑った。「変なコトに感心しないの」
「じゃあ、真雪も妊娠して赤ちゃん産めばミルクが出るってことなんだね」
「あたしを妊娠させてみる?」真雪はいたずらっぽく言った。
「今はそんなこと、できないでしょ」
「あたしのミルク、飲みたい、って言ったじゃん、龍」
「我慢する。牛乳飲む時、妄想するよ」
「龍ってば、牛乳飲む度に、あたしのお乳飲んでるとこを妄想するってわけ? 怪しすぎ」真雪は笑った。龍も笑った。
「牛乳を出すために、牛っていちいち出産してるんだね」
「そうだよ。そして生まれたメスの牛は大きくなったらまた人工授精させて牛乳を搾る。その繰り返し」
「じゃあオスの牛って?」
真雪は怖い目をして言った。「精子を採るための種牛になるか、肉牛として売られていくか」
「……僕、種牛がいい」龍がぽつりと付け加えた。「人間で本当に良かった……」
「龍って、相変わらず反応が純朴でかわいい。ちっちゃい頃から変わってないね」真雪が微笑みながら龍の前髪を撫でた。
「でも、さすがだね、真雪。動物のこと、よく知ってるよ」
「少しは勉強してるからね」