Twin's Story 9 "Almond Chocolate Time"

《2 健太郎と春菜》

 

 健太郎の部屋。

「ごめん、ルナ。父さんたちやたらと盛り上がっちゃって……」肩に掛けたタオルで濡れた髪を拭きながら健太郎は言った。

「いいの。気にしないで。すっごく楽しかった。ケンの家族も海棠家もみんなとっても生き生きしてる。いつも何か面白いことを見つけようとする。私ここのみんな大好きだよ」

「ほんとに?」

「うん。ところで、」

「なに?」

「さっきは何で大声出してたの?」

「え? い、いや、何でもない。何でもないから」

「そう?」

「はい。気にしないでください。春菜さん」

「変なの」

 

「そうそう。父さんの言ったことも、気にしないでくれる?」

「え?」

「メイド服がどうとかって、言ってたじゃん」

 春菜は少しうつむきがちに上目遣いで言った。「私、メイド服、着てみてもいいよ」

「ええっ?!」

「私がメイドさんになったら、ケンは萌える?」

「や、やめてくれよー」健太郎は赤くなった。

 

「ルナはさ、」

「ん?」

 健太郎がベッドに並んで座った春菜の肩に手を置いた。「正直なところ、学校を出たらどうしようと思ってる?」

 

 春菜は頰を赤らめて小さな声で言った。「ここに……住みたい」

 

「ホントに?」健太郎は目を大きく開き、春菜の顔を見た。

「だめ?」

「君がずっとここにいてくれたら、俺、めっちゃ嬉しい」健太郎は春菜の手を取り、顔をほころばせた。「でも、うちに来たりしたら、本当にメイド服着せられて、接客させられるぞ、きっと」

「私、やるよ。喜んで」

「本気?」

「もちろん本職はデザイナーだから、そっちの仕事の方も任せてもらえたら嬉しいけど」

「うちとしては大いに助かるよ。みんな美的センス、ほぼゼロだからね」

「それはない。だって、お菓子職人は立派な芸術家だよ。今日のケーキのデコレーションのセンス、私、やられたって思ったもん。お父さんが作られたんでしょ?」

「うん。ケーキを一つ作る時は、父さん誰にも手伝わせない。一から全部、自分の手で作るんだ。クリームさえ俺たちにかき回させてくれない」

「そうでしょ? それが職人であり、芸術家ってもんだよ。仕事場のことも『アトリエ』って言うじゃない」

「君にも通じるところがあるね」健太郎は嬉しそうに赤面した。


「俺、ルナとここにこうしていられることが、嬉しくてしょうがない」

「どうしたの? 急に」

「俺さ、君のような人をずっと渇望してたような気がするよ」

「そんな……。私の方がケンみたいな人をずっと探してた」

「ジグソーパズルの隣同士のピースみたいに、ぴったりはまる人、それでようやく完全にできあがる、っていう人、みたいな感じかな、俺にとってのルナってさ」

「私もだよ、ケン」

「無理してない? 俺とつき合うことに」

「全然。私もあなたが今、隣にいることで完全体になれた気がする。もっと早く知り合っていればよかったな」

「ルナ……」

 

 春菜は少しだけ不安そうな顔を健太郎に向けた。「ケンこそ、隣にいるのが私でいいの?」

「言っただろ、君は俺の隣のぴったりはまるピースだって」

「で、でも……」

「何? 何か気掛かりなことでも?」

「ケンは高校の時、夏輝のことが好きだったんじゃないの?」

「昔話を始めます」健太郎は笑った。

 

「高校三年生のある日、俺は修平と一緒に窓からグランドを眺めてました。そこでは陸上部の連中が大会に向けて練習をしてました」

「その中に夏輝がいたんだよね」

「そう。そもそも、うちの学校の陸上の女子のユニフォームが原因だと言えなくもない」

「あれ、セクシーだよね」

「自分の部活で忙しかった修平と俺は、もう一度あのユニフォームが見たくて、うちの学校であった陸上の大会の日にわざわざ学校に行って、窓から見てたんだ」

「いかにも年頃の男の子のとりそうな行動だね」

「だろ? その時一番目立っていたのが夏輝」

「夏輝のユニフォーム姿、様になってたもんね。それに、脚もきれいでセクシーだし」

「俺も修平もその姿にくらくらきたのは事実だね」健太郎が笑った。「思春期の男って、世の中で一番スケベな動物だからね」

「ケン、その夏輝に告白するつもりでいたんじゃないの?」

「今思えば、告白しなくてよかったと思う」

「どうして?」

「勢いで告白しても、きっとうまくいかなかった」

「でも、夏輝だって修平君に告白したのって、ほとんど勢いだったんじゃない?」

「そうかなあ。夏輝はかなり前から修平を狙ってたんじゃないの?」

「読めなかったなあ、彼女の気持ち。確かに私も夏輝に頻繁につき合わされたけどね、剣道場に。でも彼女があそこまで真剣に修平君のことが好きだったなんて思っていなかった」

「そんな感じだったよね。でもあれが夏輝なりの想いの醸成の仕方だったんだと思うよ」

「醸成か……。彼女なりのね。あなたはどうなの?」

「俺も夏輝はそれまでずっと気にしてたけどね。あの明るさとかわかりやすさとか」

「わかる。それ」

「それであのユニフォームだろ、臨界点に到達!」健太郎は笑った。「やっぱり勢いだね。告白したとしてもさ」

 

「それにしても、絶妙なタイミングだったよね、あの時。夏輝が修平君に告白したの」

「そうだよね。俺が夏輝に告白しようと決意した瞬間、夏輝が修平にコクったわけだからね。あっという間の失恋だ」

「傷心のケンは、その痛手をどうやって克服したの? 誰かに慰めてもらったりしたの?」

「え?」健太郎は固まって、顔をこわばらせた。

「どうかした?」

「き、君と出会って、こ、克服したんじゃないか」

「そうなの?」

「そうさ。君の魅力を知った途端、夏輝への想いは吹っ飛んじまったよ」

「ほんとに?」春菜は懐疑的な目をして言った。

「だから、もともと勢いだったんだってば。本気で夏輝に恋してたわけじゃないって」

「私には本気で恋してた?」

「君への想いは、ちょっと例外的かも」

「例外的?」

「怒らないで聞いてくれる?」

「うん。聞く」

 

「初めて君と出会った時も、その後も、俺、君のことは別に親しくならなくても困らないレベルの女の子だったんだ」

「うん。わかるよ。自分でもそう思う」春菜は少しうつむいた。

 健太郎は春菜の肩にそっと手を置いた。「でもさ、あの初めての日にも言ったけど、君の中からあふれ出すすごさに圧倒されて、この子、こんなに真剣で激しくて、それでいて繊細で柔らかいんだ、って感じることができたら、もう、一気呵成って感じ」

 

「ケン、大げさすぎ」春菜は頰を赤らめ、肩に載せられた健太郎の手に自分の手を重ねた。

 

「ほんとだって。一見地味に見える君の本当の姿を見ることができた俺って、すごくラッキーだって思ったしさ、誰も気づかないそんな君を俺だけのものにできる、って感じたら、もう君のことが抱きたくて抱きたくて仕方なかったんだ。早くこの子と一つになりたい、繫がりたいってね」

「うそー」春菜はますます赤くなった。

「知ってた? あの時、俺、必死でセーブしてたんだよ。君が俺の身体を求めてるってわかった途端、それこそ野獣になってた可能性もあった」

「何でセーブしたの? 私は別にケンが野獣化しても平気だったのに」

「そうはいかないよ。そんなことして君がもうたくさん、って俺から離れていっちゃったら、また元に戻っちまう」

「……本気だったんだね。ケン……」

「そうさ。あの時からね」健太郎は春菜の身体をネグリジェ越しに抱きしめた。「君のこと、ずっと大切にしたい、そう思った」そして二人はそっと唇を重ね合った。

 

 

 健太郎は春菜の身体をベッドに横たえ、ゆっくりとネグリジェのボタンを外していった。ピンクのブラとそれとお揃いの小さなショーツ姿になった春菜に健太郎は胸を熱くした。

 

「ルナはほんとにピンクが好きなんだね」

「うん。ケニーお父さんもピンクのメイド服なんて言ってたけど、私、龍くんにも言われた」

「え? 龍に?」

「うん。春菜さんはピンクがよく似合うね、って」

「あいつめ、いつの間に俺のルナにちょっかいかけたんだ」

「そんなんじゃないよ」春菜は笑った。そして両手を健太郎に向けた。「来て、ケン」

 

 健太郎は来ていたスウェットを脱いだ。黒い下着姿になった健太郎はゆっくりと春菜に覆いかぶさり、髪を優しく撫でた後、また唇を重ねた。「んん……」春菜が小さなうめき声を上げた。そして彼女は健太郎の首に手を回し、唇をとがらせて彼の上唇を吸った。健太郎は春菜の両頰を両手で包み込み、首を傾けて大きく口を開き、春菜の口を塞いだ。「あ、んんっ……」健太郎の舌が春菜の舌を探し求めた。春菜はそっと健太郎の舌を舐めた。健太郎はそのまま春菜の舌に自分それを絡ませ、激しく吸った。

 

 春菜の鼓動は既に速かった。

 

「ケン、ごめんね、あたしいつまでもキスが下手で……」

「え? 誰がそんなこと。ルナのキスは俺にとっては最高だよ」

「そうなの?」

「君が唇をとがらせる仕草、俺、萌える」健太郎は微笑んだ。

「やだ、恥ずかしい」

「それ見ると、いてもたってもいられなくなって、絶対吸い付きたくなる」

「吸い付くだなんて」春菜は笑った。

 

 健太郎は春菜の目を見つめながら背中に手を回しブラのホックを外した。そして彼女の手からブラを抜き取った。春菜は慌てて自分の乳房を両手で覆った。

 

「またやってる。胸見られるの、恥ずかしいの?」健太郎が訊いた。

「だって、私の、大きくないし」

「そんなこと気にしてるんだ……」

「だって、私のに比べたら真雪のなんか、すっごく大きくて形もいいじゃない」

「あのね、何でマユのと比べる必要があるんだよ。だいいち俺、あいつの胸をいっつも見てるわけじゃないから」健太郎は赤くなった。

「兄妹だから、何度か見たことはあるんでしょ?」

「そ、そりゃ、何度か、ぐ、偶然ね。って、な、何の話だよ、まったく」健太郎はますます赤くなっていた。「それに、あれはもう龍のものなんだから」

「龍くん、彼女のおっぱいにめろめろなんだよね」

「そうらしいね。ほら、いいから手をどけて」健太郎は春菜の手を取って、胸から外させた。「俺、ルナのおっぱいは大好きだよ」そう言って舌先で少しだけ彼女の左の乳首を舐めた。「ああん!」

「感度いいから」

「ケンったら……。ああああ……」健太郎はそのまま乳房を大きく咥え込み、春菜の乳首を口の中で弄んだ。「だ、だめっ! あああ、か、感じる、感じる、ケン……」

 

 

 やがて健太郎は口を春菜の肌の表面で滑らせながら、彼女のショーツを脱がせた。そして股間の茂みに到達させると、谷間とクリトリスを交互に舐め始めた。「んんんっ!」春菜は苦しそうに呻いた。健太郎はその行為をずっと続けた。「ああ、ケン、ケン……」春菜の身体が大きく動き始めた。いつしか春菜の谷間から泉がたっぷりと湧き出し始めた。健太郎はその行為を続けながら自分の下着を脱ぎ去った。既に大きくなったペニスが跳ね上がった。

 

 健太郎は身体を起こし、膝立ちになった。そして春菜を見下ろした。「ルナ、」

 

「ケン、」春菜の眼鏡の奥の瞳がうっすらと開けられた。春菜は一瞬健太郎のペニスを見たが、すぐに目を閉じた。

「きて、来て、ケン、私に……」

 健太郎は再び春菜に覆いかぶさった。「入ってもいい? ルナ」

「うん」春菜は目をしっかりと閉じたまま大きくうなずいた。

 

 春菜の身体を抱きしめたまま、健太郎はペニスを彼女の谷間に埋め込み始めた。

「ああ、あああ、ケン、ケン……」春菜の身体がのけ反った。健太郎はゆっくりと腰を前後に動かた。「んっ、んっ、」

 

「ああ、ああん、いい、熱い、熱いよ、ケン……」

 春菜は健太郎の動きに合わせて身体をリズミカルに動かし始めた。

 

「あ、ああ、お、俺、もう……」健太郎の身体の中から熱いものが沸き上がってきた。加速度的に健太郎は腰の動きを速くし始めた。激しく彼のペニスが春菜の中心を何度も貫く。「あっ、あっ、ああっ!」春菜の身体が細かく震えた。「イ、イっちゃうっ!」びくびくっ!

 

 その瞬間、健太郎は上り詰めた。

「ああああああっ、ルナ、ルナっ!」「ケン、ケン、イってるっ! ああああああ!」

 身体の火照りと動悸が収まるのを、二人は抱き合ったまま待った。

「ケン、ごめんなさい……」

「え? どうしたの?」

「あたし、臆病だよね」

「何が?」

「咥えて欲しいんだよね?」

 健太郎はふっと笑った。「今日はもしかしたら、って思ったけどね。いいよ、無理しなくても」

 

「今度は……がんばるからね」春菜の目がとろんとしてきた。

 

「だから、無理しなくてもいいって。自然とできるようになるまで、俺、待てるから」

「ごめんね……ケン……ケン……」

 

 春菜はそのまま小さな寝息を立て始めた。健太郎も急に疲労感を覚え、うとうとと眠り始めた。

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