Twin's Story 9 "Almond Chocolate Time"

《5 春菜と健太郎》

 

「ルナっ! ルナーっ!」

 

 健太郎の叫び声に、横で眠っていた春菜が飛び起きた。

「ケン、ケン、どうしたの?」彼女は健太郎の身体を揺すった。

「はっ!」健太郎は大きく目を開いた。

 

「何か、悪い夢でもみた?」

「夢? 今のは全部・・・夢?」健太郎は放心したようにつぶやいた。「え?」

 健太郎は自分の股間に手を当てた。「ル、ルナ、ごめん、お、俺、出しちまった!」

 

 全裸で寝ていた健太郎の大量の精液が腹、股間はもちろん、触れ合っていた春菜の腹や胸にも放出されていた。

 

 健太郎は慌てて起き上がり、ティッシュを何枚も手に取り、それを拭き取り始めた。「ごめん、ルナ。本当にゴメン」

「大丈夫? ケン」春菜も身体を起こし、ティッシュを取った。その時ドアが小さくノックされた。「ケン兄、ケン兄、どうかしたの?」真雪の声だった。

 

 健太郎は下着を穿き、スウェットを着直して春菜に目配せをした後、ドアに向かった。春菜はネグリジェを羽織った。

 

「何かあったの?」健太郎によって開けられたドアから真雪が心配そうに顔を覗(のぞ)かせた。彼女の後ろに、龍も眠そうな目を擦りながら立っていた。

 

 健太郎は笑いをこらえながら言った。「二人とも、入れよ」

 

 

「強烈っ!」健太郎の話を聞き終わった龍が言った。「俺、いっぺんに目が覚めたよ」

「お前のせいで、俺、安眠できなかっただろ! 何てことをしてくれたんだ! お前は!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。お、俺何にもしてないし」龍は困惑したように言った。

「そうだよ、ケン兄が勝手にみたんでしょ? 変な夢。でもあたしも以前強烈な夢、みたことあったな。龍がケン兄を縛り上げて犯しちゃう夢

「ああ、あれも強烈だったよね。でも何でいつも俺ばっかり?」

「龍くんって夢の中では極悪人なんだね」春菜は笑った。「でも、もしかしてケンって、真雪やお母さんを抱きたいって思ってるんじゃないの? 夢はその人の願望を表すって言うし」春菜はカモミール・ティのカップを口に運んだ。

「そ、そ、そんなわけないだろ! お、俺、母親や妹とセックスしたいなんて思ってないからな!」健太郎はちらりと真雪を見て赤くなった。

「妹って言っても同い年、同級生だしねえ。着替えを覗(のぞ)いてムラムラしたりしない?」

「ほ、本人が言うなっ! それにな、俺、お前の着替え覗いたりしないだろっ!」

 

「じゃあさ、ミカさんはどうなの?」真雪が健太郎にだけ聞こえるように囁いた。「母親みたいなものじゃん。彼女だって」

「ばっ!」健太郎は慌てた。

「何? どうしたの? ケン」春菜が反応した。

 

 健太郎はだらだらと冷や汗をかき始めた。

 

「秘密のこと? 私に言えないことなの?」微笑みながら春菜は追い打ちをかけた。

「こっ、怖いよ、ルナ。その微笑みが余計に」

「え? 別に他意はないよ。純粋に聞きたいだけ」

「もしかして、ケン兄のどきどき初体験のこと?」龍が真雪に訊いた。真雪は微笑みながらうなずいた。

「い、言っていいもんかな? マユ」

「何であたしに訊く? 自分で判断して、ケン兄」

「こっ、こっ、この話をしたら、ルナが二度とここに来なくなるんじゃないか、って今思ってる」

「そんなショッキングな初体験だったの?」

「ショッキング、かもしれないね、確かに」龍がアーモンドを口に放り込みながら言った。「普通じゃないことは確かだ」

「私、きっと大丈夫。何を聞いても驚かない。あんな夢をみるケンだから、これまでにいろいろあったんでしょ?」

 

 健太郎はまただらだらと冷や汗をかき始めた。

 

「最初に謝っとく。ごめん、ルナ」

「はい、わかりました。で?」春菜が促した。健太郎は恐る恐る口を開いた。

「お、俺の初体験の相手はミ、ミ、ミカさんなんだ。高二の夏……」そしてうつむいた。

 

「ほんとに? 素敵っ!」春菜が叫んだ。

 

「『素敵』?」残りの三人が同時に叫んだ。

「予想外の反応!」龍が言った。

「萌える萌える! 高校生と人妻との恋!」

「春菜にもオタクの気があったんだね」真雪が言った。

「見たかったなあ……」春菜が夢みがちな目で言った。「想像するだけで興奮する。見たかったなあ……」

「な、ルナ、何だよ、『見たかった』って。君はいやじゃないのか? お、俺が違う女の人を抱いたっていう事実を聞いて」

「それとこれとは別。それとも、今も抱いてるの? 時々、ミカさんを」

「そんなこと、あるわけないだろっ! い、今は抱いてない」健太郎が叫んだ。

 

「今は?」

 

「やばっ!」健太郎は口を押さえた。

「その後も何度かあったってこと?」

「も、もう勘弁してくれー」健太郎は泣きそうになった。

「そっかー。だから食事の時慌ててたんだ、ケン。そう言うことだったのね」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」健太郎は春菜にぺこぺこと頭を下げた。

 

「今度、もしそう言う機会があったら、言って。私、絶対見に行くから」

「ええっ?!」

「素敵じゃない。私、ケンがミカさんに抱かれるのだったら許せる。何だか絵になりそうだもの」

「知らなかった。ルナがこんなにぶっ飛んだ娘だったなんて……」

「ついでだから、」真雪が口を開いた。

「なに?」春菜が真雪を見た。

夏輝に失恋した傷心のケン兄を慰めてくれたのもミカさんなんだよ」

 

 健太郎は真っ赤になって縮こまっていた。

 

「慰めてくれた、って、心も身体も?」

「もちろん」

「素敵、素敵っ!」春菜はベッドに腰掛けたまま上下に跳ねた。

 

「マユー、覚えてろよ……」健太郎は真雪を睨(にら)んだ。

「えっ?! でも、」春菜が口を押さえた。「ミカさんって、龍くんのお母さんだよね?」

「そうだけど」龍が涼しい顔で言った。

「ど、どういう気持ち?」

「何が?」

「だ、だって、自分の母親が、あなたにとって兄弟同然のいとことセックスしたんでしょ? 龍くんの方がショックだったんじゃないの?」

「あんまりショックじゃなかったなー。だって、二人とも俺ちっちゃい頃からよく知ってるし、」

「当たり前だ。特にミカさんはお前を産んだ人なんだからな」

「二人ともそのことで俺に対する態度が変わったりしないし」

「そんなものなんだ……」

 

 健太郎が言った。「それに、そのことを知った時、龍はマユに目がくらんでたからなー。母親が俺に抱かれたことなんて、どうでも良かったんじゃね?」

「くらんでたの? 龍」真雪が訊いた。

「はい。仰る通り。あの時は既にもう貴女しか見えてませんでした」龍は真雪の手を取って笑った。

「ごちそうさま」春菜も笑った。

 

 

「そう言う龍もさ、」真雪だった。「ママを抱いてみたい、なんて思ったことないの?」

「マユミ叔母さんを?」

「そう」

「うーん……」

「お、考えてっぞ」話題が自分から遠ざかった健太郎が、安心して楽しげに言った。

「あるとすれば、真雪に似てるからふらふらと、っていうシチュエーションかな」

「だけど、龍ったら、ママを思いっきりイかせてたんでしょ?」

「いや、だからそれはケン兄の夢の中の俺でしょ?」

「春菜も激しく昇天させてたみたいだし。ケン兄を縛り上げてさ」

「俺、迷惑だよ」龍がまたアーモンドをつまみながら言った。「その俺って、超性格ワルだよ」

「龍ってテクニシャンなんだねー」真雪は笑った。

 

「でも、」龍が真雪を睨んで言った。「真雪、俺よりケン兄のキスの方がいい、って言ったんだって?」

「なに怒ってるんだよ。変なの」真雪もカップを手に取った。

 龍は健太郎に向き直った。「ケン兄、真雪がそう言ったんだよね?」

「確かに言ったなー」健太郎は面白そうに言った。「でもお前、ルナに『龍くんの方が感じる』って言わせたんだぞ。おあいこじゃないか」

「そ……」龍は言葉を詰まらせた。

 

「二人ともなに夢の中の話を本気にしてるんだよ」真雪が言った。「それともなに? 現実に春菜のこと、気にしてるの? 龍」

「ああ、気にしてるよ」龍はあっさりと言った。

「えっ?!」健太郎が眉間に皺(しわ)を寄せた。

「被写体として、とっても魅力的だ」

「え? どんな風に?」

「気を悪くしないでね。春菜さんはピンクがよく似合うから、その名前通り春に『シンチョコ』をバックに撮ってみたい。ピンク系の服、着てもらって」

「なるほど」健太郎はとりあえずほっとして肩の力を抜いた。

「別にメイド服でなくてもいいからね」龍は笑った。

「メイド服もまんざらでもないんだってさ、ルナは」

「へえ、ホントに?」真雪が言った。「いつか実現させようか」

「うん」春菜がこくんとうなずいた。

 

「萌えてきたっ!」真雪が力強く言った。

「真雪はオタクだからなー」龍がまたアーモンドに手を伸ばした。「ケン兄も食べたら? 安眠できるよ。アーモンド」

「俺、もう眠るのが怖い」

「じゃあ起きてたら? 春菜と一緒に。いろいろやることあるでしょ」真雪が言った。

「ばかっ!」例によって健太郎はひどく赤面した。

 


 龍と真雪が部屋を出て行った後、健太郎と春菜は寄り添ってベッドに横になった。春菜はネグリジェを脱いだ。さっき真雪たちがここに来た時には、下着をつける時間がなかったので、既に全裸だった。健太郎もスウェットを上下とも脱ぎ、下着一枚の姿になった。

 

「楽しいね」春菜がくすくす笑い出した。

「え?」

「私、ここの人たちと話してると、心がいっぱい広がっていく気がする」

「広がる?」

「今まで心の奥に沈んでた自分が、いっぺんに解放されて弾け出すような感じがするよ」

「確かにルナ、今日うちに来た時と比べても、随分大胆なこと言ったりしたりするようになったような……」

「だよね。私も自分でそう思うよ」

「変わりモンだろ? 俺の家族や親戚」

「確かに変わってる。あんなにオープンにセックスの話ができるって、ある意味すごい。中三の龍くんでさえそうなんだからね。もう私よりすっかり大人、って感じさえするもん」

「ごめんな、ルナ」

「私、あなたとおつき合いをし始めて、自分がどんどん変わっていくのが嬉しい」

「変わっていってもいいけど、俺をどうでもいいって思わないでくれよ」

「絶対思わない。だって、それもこれもケンのお陰だもん。ある意味、あなたは私の心の解放者。恩人だから」

「ルナ……」

 

 春菜は健太郎の首に手を回し、唇を突き出してキスを迫った。健太郎はすぐに応え、春菜の口全体を自分の口で覆った。舌を絡ませながら春菜は手を健太郎の下着に伸ばした。「んっ……」健太郎は小さく呻いた。春菜は口を離し、彼をあお向けに押し倒した。

 

「ルナ?」

 春菜は健太郎の小さな下着をためらわず脚から抜き去り、髪を搔き上げた。

 

「私、もうできるよ」

 

 そうして春菜は既に大きくなって脈動している健太郎のペニスを一気に咥え込んだ。

「ああっ! ル、ルナっ!」健太郎はのけ反った。

 春菜はその根元を両手で持って、口を上下に動かし始めた。「んっ、んっ、んっ!」

「や、やめろ、ル、ルナっ! よ、よせ! 俺、あ、あああああ!」

 

 身を引くこともできず、健太郎は一気に高まった興奮の波に飲まれた。「は、離せ! 口を、ぐうっ!」

 

 びゅるるるっ!

 

「んんっ!」春菜は呻いた。しかしそのまま口を離すことなく、動かし続けた。「うああああああっ!」健太郎が身体を痙攣させた。健太郎のペニスを咥えたままの春菜の口から大量の精液があふれ出した。

 

 ようやく春菜は口を離し、また髪を搔き上げた。しかし一度収まったかに見えた健太郎のペニスはまたぐっと反り返り、再び脈動を始めた。

 

「あああっ! また……で、出る、出るっ!」健太郎は叫んだ。そして勢いよく噴出するそれは春菜の顔や髪や眼鏡に次々に絡みついた。

 

「ルナ! ルナっ!」健太郎は身体を起こした。「だ、だめだ! そんな、お、俺、俺っ・・・・」

 

「あんまり大声出すと、また真雪たちを起こしちゃうよ」春菜は手にティッシュを取って、口元を拭いながら言った。

「ルナ! ごめん、君に、いっぱいかけちゃって……」

「やっとできた。嬉しい」春菜は健太郎の精液でどろどろになった顔をほころばせた。「もっと早くからやっとけばよかった」春菜は眼鏡を外した。「とってもよかったよ、ケン」

「そんな、無理しなくても……」健太郎は真っ赤になってまたサイドテーブルからティッシュを何枚も何枚も手に取り、春菜の顔や髪を拭き始めた。

「だって、やって欲しかったんでしょ?」

「出すまでやんなくてもいいよ。もう……」

「全然イヤじゃなかった。口でやるのって、あなたの温かさが直(じか)に感じられて気持ちいい。充実感がある」

「だから、出す前に口、離してよ」

「ケンはいやなの? 私の口に出すの」

「イヤです」

「どうして?」

「ルナがとってもかわいそうになる」

「だから平気だってば」

「もう勘弁してくれよ」健太郎は泣きそうな顔で言った。

「わかった。そうする」春菜は笑った。「ケンが嫌がることはやんない」

「よかった……」健太郎はほっとため息をついた。

 

「だめだ、ティッシュで拭いたぐらいじゃ。ルナ、シャワー浴びよう」

 健太郎は立ち上がった。

「そうだね」春菜も立ち上がった。

「一緒にシャワーって、考えてみたら初めてだね」

「ケンのハダカがまたじっくり見られる」春菜が嬉しそうに言った。「眼鏡も持ってかなきゃ」

 

 春菜は再び眼鏡を掛けた。健太郎はその笑顔を見ていると、またその唇に吸い付きたくなるのだった。二人は下着を着け直してそっとドアを出た。

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