Twin's Story Chocolate Time 外伝 "Hot Chocolate Time" 第3集 第3話

 

海の香りとボタンダウンのシャツ


4.こうじ

 『こうじ』はメッセージで伝えてきた通りの淡い黄色のシャツにジーンズ姿でその店の一番奥のテーブルで待っていた。

 美紀が近づくと、彼はすぐに気づいて立ち上がり、頬を少し赤く染め気をつけの姿勢でぎこちなく微笑んだ。美紀はすっと右手を差し出した。『こうじ』は一瞬戸惑ったが、ふっと頬の筋肉を緩めてその手を握り返した。


 『こうじ』は本名を島袋晃司と言った。美紀よりも2つだけ年上だったが、眉の太い童顔がまだ20代と思わせる趣をたたえていた。

「あの、」くりくりした目をしばたたかせながら、島袋は躊躇いがちに口を開いた。「良かったんですか? 僕なんかと会って」

「はい」美紀はにっこりと笑った。

「で、でも、不安じゃありませんか? 今まで会ったこともない男とこうやって、その、親しく会話をするってこと」島袋は慌てて付け加えた。「あ、いや、親しくってほどじゃないですね、まだ」

 そう言って彼は頭を掻いた。

「お名前も教えていただいたし」美紀は微笑みながら島袋の目を見つめた。


「土曜日の夜、お友達と過ごしたりしないんですか?」美紀が訊いた。

「一人だと休日は暇です」

「島袋さんの仕事って、土日が休みなんですか?」

「え? は、はい。恵まれてますよね、確かに」

「水泳は小さい頃から?」

「はい。高校まで水泳部でした」

「あたしも大学までやってたんですよ」

「ほんとですか?」島袋は目を剥いて身を乗り出した。「すごい! 奇遇ですね」

 美紀はふふっと笑って言った。「貴男がプロフィールに『水泳』って書かれてるのもあたしがお返事を差し上げた理由の一つなんです」

「あ、ああ、そうか。そうでしたね」島袋はまた頭を掻いた。

「お休みの時には海に行ったりされるんでしょう? ご趣味がマリンスポーツだったら」

「一泊ぐらいじゃ楽しめません。せめて一週間ぐらいどこかに滞在しないと」

「サーフボードとかですか?」

「いえいえ、僕は潜る方」

「ダイビング!」

「興味ありますか?」

「海はあたしも大好きです」


 美紀は目の前のこの男性が、あの黒眼鏡の男と違って、いかにもカラダの関係を求めるような会話に持ち込もうとしないことにかなりの好感を持ち始めた。自分の趣味とか楽しいことを、本当にいきいきと身振り手振りを交えて語る姿は少年のような雰囲気さえ感じさせた。


「どこかで飲みます?」

 美紀が切り出した。

「お酒、大丈夫なんでしょう?」

「そうですね。僕もなんだかお腹が空いてきました」



 街の居酒屋に入った美紀と島袋は、生ビールのジョッキで乾杯した。

「よろしくお願いします」島袋が言った。

「こちらこそ」美紀も言って微笑み、ジョッキのビールを豪快に煽り、一気に半分ほどごくごくと喉を鳴らして飲んだ。

「うわあ……」島袋はあっけにとられてその美紀の姿を見ていた。「マキさんって、なんだか逞しいですね」

「ごめんなさい、はしたないですね」美紀は照れたように笑った。

「そんなことないです。僕も緊張がほぐれてきました。取っつきにくくて話が弾まない女性よりずっと素敵だと思います」

「ビール好きなんです。島袋さんは?」

「僕も好きです。僕は出身が沖縄なんですけど、ゴーヤーチャンプルーにビールは最高の組み合わせだと思います」

 美紀はメニューを手に取り、ページをめくった。

「このお店には……あ、ありますよ、チャンプルー」

「ほんとに? 注文していいですか?」島袋はひどく嬉しそうに言った。


 小皿にゴーヤーチャンプルーを取り分けながら、美紀が訊いた。「出会い系サイトって、男の人は有料なんでしょう?」

「え? ああ、あのサイトですか? いや最初に会員登録すると、初回ポイントをもらえるんです。100ポイント。だからそれがなくなるまでは一応無料ですね」

「そうだったんですね」

「最初から有料のサイトもあるらしいですけどね」

「そのポイントで何ができるんですか?」

「掲示板で女性を探して、誰かのプロフィールを見るのに2ポイント、メッセージを個人的に送ると5ポイント。他にも秘密のプロフィールを見たり、写真を見たりするとまた数ポイントずつ持って行かれます」

「そういうシステムだったんですね……」美紀は箸を手にとって言った。

「名前は本名じゃないし、年齢もほんとかどうかわからないし、掲示板では一言『寂しいの』とかしか書かれてないんで、プロフィールを開けて見るのはある意味賭けです」

「何人かの女性のプロフィールをご覧になりました?」

「ええ。でもなかなかしっくりこなかった。貴女以外は」島袋はにっこり笑って輪切りにされたゴーヤーを口に入れた。

「そうやって男の人って、いい人に巡り会うまでポイントを消費し続けるってことなのかな」

 口をもぐもぐ動かしながら島袋は言った。「たぶんね。ポイントがなくなりかけたら、コンビニで支払って追加する。まあ、あんなサイトはそうやって稼いでるんでしょうね」

「一大ビジネスですね」

 島袋は箸を折った箸袋に置いて、両肘をテーブルについて顎を支えた。「だから僕はとってもラッキーでした。初回ポイントの範囲内でこんなに素敵な女性と巡り会えたんですから」

 そして彼は頬をほんのり赤くした。

 美紀も顔が火照るのを感じ、思わず目の前のジョッキを持ち上げ、ビールを口にした。


「でもね、僕も会員になった日に、何人かの女性にメッセージを送ろうと思っていろいろ見てみたんですけど、掲示板に並んでいるのは20代の女性ばっかり、しかもみんなタグは『スグ会いたい』です」

「そうなんですね……20代ですか」

「試しにそのうちの一人のプロフィールを見てみたんですけど、わりと明るくて、会えそうな時間帯も一緒だったのでメッセージを送ってみたんです」

 美紀は頷いた。

「そしたら、すぐに返事が来て、何て書いてあったと思います?」

「すぐに返事が来たんですか。すごいですね。まるで待ち構えてたみたい」

「待ち構えていたんだと思います。『割り切り。条件はゴム使用、ホテル代別、いちさん~いちご。条件が合わなかったらスルーして』って書いてありました」

「それって……」

「援助交際希望者ですよ。僕は一気に女性不信に陥りました」島袋は笑った。

「お小遣い稼ぎ感覚ですね」

「その通りだと思います。援助交際なんて言いますけど、結局は売春でしょ? そんな女と僕はつき合いたいと思わない」島袋は吐き捨てるように言った。

「他の女性もそんな感じなんでしょうか……」

「20代で『スグ会いたい』タグの女性はほとんどそうじゃないかなあ。ほいほいそれに乗っかるオトコがいるから彼女たちもこういうサイトにどんどん登録するんでしょう。女性は無料だし」

「なるほど……。」美紀は躊躇いがちに続けた。「島袋さんはそんな女性を抱きたいとは思わないんですか?」

「だって風俗と同じでしょ? それって。お金払って、身体を満足させるだけ」島袋は肩をすくめた。「僕はたとえ身体の関係になるとしても、そのお相手とは、いろいろお話しして、精神的にも近づきたいと思います」

 美紀は感心して島袋の目を見つめた。「誠実な方なんですね、島袋さんって」

 島袋は頭を掻いた。「いや、かっこいいこと言ってますけど、僕だって若い子に誘惑されたらきっと簡単に騙されて、我慢できずに繋がっちゃって、お金巻き上げられるんじゃないかな」

「あたしもそんなオンナの一人かもしれませんよ?」美紀はいたずらっぽく笑った。

「それはない」島袋は笑った。「貴女は大丈夫です。間違いない」

 そして彼はジョッキを手に取り、うまそうにビールを飲んだ。


 二杯目の生ビールを三分の一ほど飲んだところで、美紀は思いきって島袋に訊いてみた。

「島袋さんは、今私と二人きりになりたい、って思われないの?」

 あおりかけたジョッキを慌ててテーブルに置き直した島袋は、突然顔を真っ赤にして言った。

「えっ? そ、そんな、マキさん、い、いいんですか? そんな、僕なんかと……。なんか、急展開……」

 美紀は目を上げて島袋の表情を観察しながら言った。「そのつもりであたしと会って下さったわけじゃないんですか?」

 島袋は眉尻を下げてひどく申し訳なさそうな顔をした。そして辺りを小さく見回した後、テーブルに身を乗り出して小さな声で言った。

「し、正直僕も男ですから、貴女みたいな魅力的な女性を、その、だ、抱くことができたらとっても嬉しいです。嬉しいですけど、」島袋はごくりと唾を飲み込んで続けた。「きょ、今日はお話するだけにしときます。でも貴女がその気になっていらっしゃるのなら、今度、会う時に……」

 島袋はうつむき、上目遣いで美紀をじっと見つめてその反応を窺っていた。

 美紀は微笑んで言った。「あたし、本名は美紀って言います。これからそう呼んで下さい」



 一週間後の土曜日、美紀は島袋からのメールに返信して、午後3時頃に再び彼と会う約束をした。

 島袋は最初に会った時とは違うベージュのジャケットを羽織り、サングラスを掛けていた。180cmの長身のその男性と並ぶと美紀はひどく小柄に見えた。

「どこに……行きましょうか?」島袋は少しおどおどしながら言った。

「いっそ」美紀は島袋の顔を見上げて悪戯っぽい笑みを浮かべた。「これから二人きりになれる場所に行きません?」

 サングラス越しの彼の目は見えなかったが、彼の頬はみるみる真っ赤になっていった。

「純情!」美紀はそう言って笑い、島袋の腕に自分のそれを絡ませた。

 大通りでタクシーを捕まえ、島袋は小さな声で一軒のホテルの名を運転手に告げた。


 壁一面がスカイブルーの涼しげな雰囲気の部屋だった。楕円形の大きなベッドを中心に、壁掛けの液晶テレビ、白いゆったりとしたソファにマホガニーのセンターテーブル。ベッド上の天井には大きな鏡がはめ込まれていた。

「あ、あの、シャワー先にいいですか?」

 島袋が額の汗をしきりに拭いながら言った。

「どうぞ。汗っかきなんですね? 島袋さん」

「すみません。じゃあお先に」

 島袋は慌てたようにバッグから着替えを取り出すとバスルームに消えた。


 続いて美紀がシャワーを済ませ、メインルームに戻ってきた時、島袋は長い薄手のローブを羽織って、ベッドの端にちょこんと腰掛け、ペットボトルの水を飲んでいた。

「このローブ、不必要に薄いですね」美紀が言って裾をひらひらさせた。

「確かに。こんなホテルだからですかね」島袋は恥ずかしげに自分の股間を押さえた。

「透けちゃう。何だか恥ずかしいな」

「美紀さんのランジェリーって、どんなのかな……」

 島袋は両手を膝に置いて上目遣いで美紀を見た。

「島袋さんはどんなのがお好き?」

 美紀はそう言って島袋の横に並んで腰を下ろした。


 島袋の右腕が美紀の腰にそっと回された。美紀は少し身を固くした。

「思いっきり優しくします」島袋はそう耳元で囁いて、美紀に身体を向け直すと、そっとその唇を彼女のそれに重ねた。美紀も彼の背中に腕を回し、口を少し開いて舌を伸ばした。島袋はそれを吸い込み、自分の舌と絡ませながら唇同士を擦り合わせた。島袋の息は、かすかにミルクのような香りがした。

 美紀の身体はいつしかどんどん熱くなっていった。


 ローブのボタンは裾を開くだけで簡単に外れるようになっていた。

 お互いに下着だけの姿になると、島袋は美紀をベッドの上に横たえ、ゆっくりと覆い被さってまた柔らかくキスをした。いつしか美紀は何かに突き動かされるように貪欲に彼の唇を求めていた。


「いいですか? 美紀さん」

 島袋は至近距離で美紀を見つめながら言った。

 美紀は泣きそうな顔でコクンとうなずいた。

「いやだったら、ちゃんと言って下さいね」

 美紀は小さく首を横に振った。


 再びキスを求めた島袋の唇が美紀の首筋、鎖骨を経由して身体を伝い降りていった。美紀はああ、とため息をついた。


「黒いランジェリー、大人っぽくて素敵ですね」

 島袋は美紀の背中に手を回し、あっさりとブラのホックを外すと、身体を起こしてそれを取り去った。

 ゆっくりとその大きな手が美紀の二つのバストを包み込んで、柔らかくさすり始めると美紀は顎を上げて思わず喘ぎ声を上げた。

「カタチのいい張りのあるバストだ」

 島袋はそのまま美紀の右の乳首に舌を這わせ、口に含んだ。

 んんっ、と美紀は身体をよじらせた。


 ゆっくりと時間を掛けてその行為を続けていた島袋は、美紀の全身がピンク色に上気したことを確かめると、彼女の足下に膝立ちになって自らのトランクスを脱ぎ去った。そして美紀の目を見つめ、肩をすくめた。


 島袋の身体の中心で、それは鋭く天を指し、大きく上下に首を振っていた。


 美紀は小さな声で言った。「ごめんなさい、島袋さん……」

 島袋はふふっと笑うと、またその大きな体を美紀に覆い被せ、耳元で言った。「大丈夫です。無理しなくても」

「あたし、まだ慣れてなくて……」

「気にしないで。じゃあ続きを」

 島袋はそう言って枕元の避妊具を手に取った。

 袋を破り掛けて、動作を止め、島袋は美紀に訊いた。「いいですか? 本当に」

「来て下さい、島袋さん」


 島袋はその薄いゴムを手に取り、慣れた手つきでするすると自分の怒張した持ち物に装着した。それから美紀の、ブラとお揃いの黒いショーツをゆっくりと脱がせた。

 美紀は天井の鏡に映った全裸の自分の姿を薄目を開けて見た。それは自分とは別人のように艶めかしいピンク色の肌をした全裸の女がベッドで今、まさに一人の男のものになろうとしている、絵に描いたように無防備な図だった。


 島袋は避妊具を被せたペニスの先端に唾液を塗りつけると、右手で握り、美紀の秘部にそっと宛がった。

「いくよ」

 美紀はぎゅっと目を閉じ、身体を硬直させた。


 島袋が美紀の最も敏感な場所に侵入してくる。全身を熱く火照らせながら、美紀はますます大きく身体を震わせていた。そしてその目には少し涙が滲んでいた。

「大丈夫ですか? 美紀さん」

 美紀は何も言わず大きくうなずいた。

 島袋は美紀の頬を撫でながら、ゆっくりと腰を動かした。

「んっ、きつい……」島袋は小さく呟いた。

 美紀はその下半身に痺れを感じ始めた。大きくうねるような快感と、鈍い痛みが交互に彼女の下腹部を貫いた。


 いきなり島袋が動きを止め、腰を引いて美紀から身体を離した。

 美紀は思わず顔を上げて島袋を見た。その男性は荒くなった息のまま赤い顔で美紀を見て、すぐに目を閉じ、顔を背けた。そしてそのまま言った。「美紀さん、バックからしても……いいですか?」

 えっ? と言って美紀は脚を閉じた。

 島袋は薄く瞳を開けて美紀に顔を向けた。「僕、バックスタイルが好きなんで……」

 美紀は哀しそうな目で島袋を見上げ、申し訳なさそうに言った。「ごめんなさい、島袋さん、あたし、それは……」


 少しの間唇を噛んで美紀を見つめ返していた島袋は、ふっとため息をついた。

「ご、ごめんなさい。僕の方こそ。初めて会ったのに、そんなこと要求するなんて、やり過ぎですね」


 島袋は再び美紀の両膝を手で包み込むようにして、ゆっくりと両脚を開かせた。そしてベッドに腹ばいになると口を秘部に近づけ、舌先でその谷間をなぞり始めた。

 生まれて初めて経験するその感触に、美紀は思わずのけぞり、言葉にならない声を上げた。

 島袋はしばらくその行為を続けた。美紀の身体はまたどんどん熱くなっていった。


 いつしか美紀の秘部からは雫が溢れ始めていた。島袋の唾液と混ざったそれは彼女の脚の付け根を温かく伝い降りていった。

 島袋はゆっくりと身体を起こし、美紀を包み込むように抱いた。そして唇同士を重ね合わせながら美紀の髪を何度も撫でた。

 しだいに美紀の身体の緊張がほぐれていくのを確認して、島袋はそのまま腰を浮かせ、再び美紀の身体の中に入り始めた。

 あっけなくそれは深いところまで到達した。美紀はああ、とため息をついて両腕を島袋の背中に回した。


 島袋は腰を上下に動かし始めた。美紀もその動きに合わせて身体を揺すった。

 二人の身体の熱さが増し、その全身には汗が光り始めた。

「ああ、島袋さん、あたし、あたしっ!」

 美紀は思わず大声を出した。

「み、美紀さんっ!」

 島袋も高い声で叫んだ。思わず美紀は目を開いた。彼は固く目を閉じて、はあはあと荒い息を繰り返しながら、何故か顔を背けて歯を食いしばっていた。

 二人の腰の動きが激しさを増し、間もなく島袋の喉元からぐううっ、といううめき声が聞こえた。その瞬間彼の動きが止まり、美紀は身体の奥深くに何度も脈動を感じた。マグマのように蠢いていた熱い感覚が美紀の身体中に拡がり駆け巡った。


 大きく息をしながら島袋は美紀に身体を預けた。流れ落ちるほどの汗をかいた背中を美紀はその手でそっと撫でながら呼吸を落ち着けた。

 島袋はそのまま美紀の肩越しに枕に顔を埋めたままくぐもった声で言った。

「とっても気持ちよかった……ありがとう、美紀さん」

「……はい」

 美紀がそう答えた時、島袋は不意に身体を起こして美紀の中からまだ萎えきっていない彼自身を抜き去った。

そしてその場に正座をして少し首をかしげて訊いた。「美紀さんは?」

 美紀は今の二人の行為で、身体は思いの外熱くなっていたと感じていたが、何か心から満足できなかったのも事実だった。それはおそらく初めての相手との繋がりだったからだろう、と半ば無理矢理自分を納得させた。

「はい。気持ち良かったです。とっても」

 そう、と言って島袋はにっこり笑った。相変わらず子どものように無邪気な笑顔だと美紀は思った。


「あの、」美紀は下着を身につけ直しながら言った。「島袋さんのケータイ番号、お聞きしてもいいですか?」
「うん。いいよ」島袋は脱いだトランクスを早々に穿き、ベッドを降りてソファに丸まっていたシャツを手に取ったところだった。彼はバッグから自分のスマホを取り出し、素早くタップを繰り返して、自分の電話番号を美紀に伝えた。
「あんまり頻繁に電話したりしませんから」美紀はその番号を自分のケータイに登録しながら言った。
 島袋は何も言わず笑顔を美紀に向けた。