Twin's Story 外伝 "Hot Chocolate Time" 第2集 第4話
交尾タイム(後編)
夕食を終えた龍と真雪は繁華から少し離れた、川沿いの静かな通りを歩いていた。
「こんな夜に、高校生がこんな所を歩いてたらだめでしょ」真雪が龍に顔を向けていたずらっぽく言った。
「心配いりません。僕には成人の保護者がいっしょですから」龍はそう言って真雪の肩を抱き寄せた。「寒くない?」
「平気。食べたら温まった。それに龍にくっついてるともっと温かいよ」
龍は嬉しそうに微笑んだ。
対岸に規則正しく並んで立っている街灯のオレンジ色の光が、川面に黄金色のジュエリーをばらまいたようにきらめいていた。
「ホテル、予約してくれてたんでしょ?」
「うん。もうすぐだよ。2ブロック先を右に折れたとこ。『メイプル・ホテル』」
「泊まったことあるの? 真雪」
「高校生の時に一度だけ。家の改修工事やってた時に、家族で利用したよ」
「そうなんだ」
龍は不意に真雪の手をぎゅっと握りしめた。
「どうしたの?」真雪は龍の顔を見た。
「え? いや」
フロントで手続きを済ませて、二人はエレベーターに乗り込んだ。そして7階で降りた。
「702号室。こっちだね」真雪が龍の手を引いて廊下を早足で歩いた。
「真雪、何急いでるの?」
「早く龍と二人きりになりたいの」
真雪はカード型のルームキーを差し込んで、ドアを開けた。
「意外に広いね」龍がバッグをベッドの上に置きながら、部屋の中を見回した。
「ツインルームは、他のホテルより広めなんだって。パパが言ってた」
「ケニー叔父さんに朝からお礼言うの忘れてた。このホテル代、持ってくれたの叔父さんなんでしょ?」
「あたしたちが去年のイブの日にどこにも出かけられなかったから、って。留守番してたご褒美なんだって」
「ありがたいね」
「こんなホテルで良かった?」
「え?」
真雪が龍の耳に口を寄せて小さく言った。「ラブホテルとか……」
龍は真っ赤になった。「そ、そんなとこ行けないでしょ」
「でも、夜に龍とやることは同じじゃない」
もじもじしながら龍は真雪を上目遣いで見た。「も、もうちょっと大きくなってから……」
「あははは! もう十分おっきいじゃん。精神的にはまだ純情な少年だけど」
真雪は龍の両手を取って楽しそうに左右に揺さぶった。
「こ、ここにはダブルベッドの部屋なんてないの?」
「龍とあたしは男性と女性。ダブルの部屋なんて、夫婦でもないかぎり提供してくれないよ」
「そんなもんなの?」
「ダブルベッドっていうことは、二人が一緒に寝る、ってことじゃない。何もない普通のいとこ同士だと、それは不自然でしょ? 特に男女だし」
「なるほど」龍は笑った。「早く結婚したいね」
「堂々とダブルベッドの部屋を使いたいよね」真雪も微笑んだ。「っていうか、」
真雪が突然龍の目を見つめたので、龍は焦って背筋を伸ばした。
「あたし、早く龍とラブホテルで愛し合いたい……」
龍は何も言わずに真雪の手をまたぎゅっと握りしめた。
龍がバスルームのドアを開けた。「さすがにバスタブは狭いね。二人じゃ無理かな」
「狭くてもいいじゃない。いっしょにシャワー浴びようよ」
その狭いバスタブに向かい合って座った真雪と龍は、ボディソープをたっぷり使い、身体中泡だらけになってはしゃいでいた。
「龍、あたしの身体で洗ってあげるよ」
「えー、何それ!」龍は恥ずかしげに言った。
真雪は龍に抱きつき、ぬるぬるになった身体を彼のたくましい身体に擦りつけ始めた。
「き、気持ちいい……。真雪の身体って、すべすべで気持ちいいよ」龍はうっとりしたように言った。
「ソープがついているからでしょ?」
龍はおもむろに真雪にキスをした。泡だらけの手で彼女の頬を包み込んで、舌を口に差し入れた。真雪は龍の背中に腕を回し、ずっと身体を擦りつけながらそれに応えた。
龍はキスを続けながら、真雪の豊かな乳房を両手で包み込み、揉みしだき始めた。ぬるぬるになった肌は抵抗が少なく、龍はその大きな膨らみを押さえつけながら撫で回した。
「んんっ……」真雪は小さく呻き声を上げた。
口を離した龍は、真雪の耳元で囁いた。「真雪、俺、もう我慢できなくなってきた……」
真雪も囁き返した。「龍ったら、もうこんなにおっきくしちゃって……」
二人は一つのベッドに倒れ込んだ。そしてきつく抱き合い、また激しく唇同士を重ね合わせ、舌を絡め合った。
初めから何も身につけていない二人の脚がもつれ合い、熱く硬直した龍のものが、真雪の太ももにあたり、先端から分泌されていた透明な液をその白い肌のあちこちに塗りつけた。
背中に腕を回し、真雪を下にして抱き合ったまま、龍は彼女の少し潤んだ目を見つめた。「ゴム、準備するね」
真雪はこくんとうなずいた。
龍の舌と唇が、真雪の二つの丘を行き来した。同時に龍は小指をそっと這わせながら、その美しく豊かな乳房を長い時間をかけて愛した。
真雪は息を荒げながら、身体を細かく震わせた。「龍、龍、あたし、も、もうイきそう……。あああ……」
真雪の腕が龍の背中に回された。龍は大きく口を開き、真雪の左の乳房の先の隆起した敏感な粒を吸い込んだ。
「ああっ! 龍、龍っ!」真雪の身体ががくがくと震えた。「龍ーっ!」
真雪の息が収まるのを待たず、龍は身体を滑らせて、彼女の中心にその口を移動させた。そして容赦なく舌で谷間の入り口の小さな種を転がし始めた。
「あああっ! 龍!」
谷間の内側が潤ってきたことを察知した龍は、左手の二本の指をそっとその中に忍ばせた。そして内壁を優しく、ゆっくりと撫でた。
「ああ、龍、いい気持ち、龍、龍……」
真雪の中からは、どんどん水分がにじみ出ていた。そしてそれは溢れ出し、シーツにこぼれ落ちた。
「龍、あたしも、あたしもっ!」
真雪は焦ったように身体を起こし、龍を押し倒して仰向けにすると、躊躇うことなくその大きく怒張したペニスをほおばった。
「うっ!」龍は呻いた。そして真雪の頭を両手で抱えた。
真雪は両手をその根本に添えて、口を前後に激しく動かし始めた。
「あ、ああっ、真雪、も、もういい、もういいよ! 離れてっ!」
龍は無理矢理真雪の頭を自分から引き離した。
口元を拭いながら真雪は笑った。「今日は早いね、熱くなるのが」
龍の息は荒かった。「さ、さっきお風呂で言ったでしょ、もう我慢できないって」
龍は再び真雪を仰向けにして、脚をベッドの端に引き寄せると、自分は床にひざまずき、また谷間に舌を這わせ始めた。
「ああ……」
龍はその行為を続けながら、素早くコンドームを自分のものに装着した。そして流れ出る真雪の雫を指にとり、それをゴムの先端に塗りつけた。
真雪から口を離した龍は、立ち上がり、そのまま真雪に覆い被さった。
「いい? 真雪」
「来て」
龍はそっと谷間に自分の持ち物をあてがい、静かに、ゆっくりと挿入し始めた。
「ああ……あたし、この瞬間が好き。とっても好き、龍、龍……」
真雪は目を閉じて顔を上気させた。
龍のペニスを奥深くに迎え入れた真雪の中は、いつになく広がっていた。まるで風船が大きく膨らんでいるように、龍の最高に怒張したものを温かく、広くゆったりと包み込んでいた。龍は自分のペニスがいったいどこに入っているのかわからなくなっていた。腰を動かしてもほとんど抵抗がなく、広い海の中を漂うように、真雪の中で脈動していた。
「真雪……、ああ、俺、何だか……」
「龍……」
龍は真雪を抱いて、ベッドの中央に移動した。そして横向きになって腰を動かすスピードを落とした。
「真雪に包まれてる……癒される……癒されるよ、真雪……」
「このまま、ずっと……ああ、龍……」
二人は抱き合ったまま、ベッドの上でゆっくりと揺れ動いていた。
真雪を抱いたまま、龍はほんの少しだけうとうととしてしまった。彼は一瞬、夢を見た。ビーグル犬二匹が交尾をしている様子が見えた。そしてそれはいきなり、真雪が板東に貫かれているシーンに変わり、すぐに消えた。
はっとして目を見開いた龍は、出し抜けに真雪から身を離した。
「ど、どうしたの? 龍」
龍は無言のまま真雪を抱き上げ、うつぶせにした。
「え?」真雪はとまどったように小さく言った。
龍は荒々しく真雪の腰を持ち上げ、四つんばいにした。そしていきり立って脈動している自分のものを一気に彼女の谷間に押し込んだ。
「ああっ! いやっ! 龍!」
龍は真雪の両手首を掴み、馬の手綱のように後ろに引き寄せながら、何かに取り憑かれたように激しく腰を前後に動かした。
「龍、龍! ど、どうしたの? いきなり、あっ、あっ!」
真雪は喘ぎ始めた。
龍の脳裏にまたあのシーンが現れた。
龍の瞼の裏で、苦しそうな表情の真雪が四つんばいになり、必死で抵抗しながらかぶりを振って、目から溢れる涙を飛び散らせている……。
「真雪っ!」龍は叫んで、動きを止め、真雪の腕を解放した。「ご、ごめん! 真雪!」
はあはあと息をしながら真雪はシーツに手をつき、頭を振り向かせて龍を見た。「ど、どうしたの? 途中でやめちゃいや」
「え?」
「続けてよ、龍」
「い、イヤじゃないの? 痛くないの?」
「今までに感じたことのない刺激で、とっても感じてるよ」
「そ、そうなんだ」
「お願い、続けて、あたしを連れて行って! 龍!」
龍は真雪の腰を抱え直して、再び自分の腰を前後に動かし始めた。
「あ、ああ……りゅ、龍、いい、とってもいい気持ち……」
「んっ、んっ、んっ!」龍は真雪の背中に覆い被さり、その動きを大きくしていった。
「龍、龍っ!」
龍はそのまま脚を伸ばして真雪の身体を押さえつけ、背後から手を前に回して彼女の大きな乳房を掴んだ。「出、出るっ! 真雪っ! ぐうううっ!」
びゅるるっ! びゅくびゅくっ! どくん、どくどくっ!
「ああああーっ! 龍、龍龍龍っ!」
真雪の身体ががくがくと大きく震えた。
◆
ベッドの上で横になり、龍は真雪の豊かな二つの膨らみに顔を埋めたままで小さく言った。
「ごめんなさい、真雪、乱暴しちゃって……」
真雪は龍の頭をそっと撫でた。「乱暴だなんて……。龍、あたしとっても気持ち良かったよ。バックでイかせてくれたの、初めてだね」
龍は顔を上げて真雪を見た。
「なんだか、動物が交尾してたみたいで、俺サカリのついたオスみたいだ……。自己嫌悪」
「昼間見てたんでしょ? ワンちゃんのセックス」
「うん」
「いいんじゃない? 龍だってオスなんだから。本能的にやってみたかった、ってことでしょ?」
「俺は真雪が大好きだし、愛してる。本能だけでセックスしてるわけじゃない……」
「知ってるよ。あたしも龍のこと大好きだし、心から愛してるよ」真雪は龍の頭を自分の乳房に押し付けた。「だから気にしなくてもいいんじゃない?」
「ごめんね、真雪……」また龍は小さな声で言った。
真雪はいきなり身を翻し、彼を下に押さえつけて、その目を睨み付けた。
「こらっ! 龍! あなた何ナーバスになってるの? いつもの龍らしくない」
龍は真雪の目を見つめ返した。「俺、やっぱり真雪とはこんな風に面と向かって抱き合って、気持ちよくなりたいよ」
真雪はふっと笑った。「バックスタイルは苦手?」
「う、うん」龍は申し訳なさそうに口ごもった。「真雪は……どう、なの?」
「バックから攻められたのは初めてだったけど、いつもと違う感じ方だったよ」
「気持ちよかった?」
「うん。とっても」
「誰が相手でも、そう思う?」
「何、それ。相手って、龍しかいないでしょ。変なこと言わないの」真雪は龍の額を人差し指で小突いた。
「そうだね」龍は安心したように笑った。
真雪はしばらく黙って龍の目を見つめていた。龍は落ち着かないように視線を泳がせた。
「後でもう一回、抱いて、龍」
「う、うん。わかった。でも今度は真雪が上になって。いつものように」
「いいよ」
龍は腕を大きく広げ、真雪を抱きかかえて自分の身体に押し付けた。
真雪はそっと龍にキスをした。
二人は並んで仰向けになった。
「昼間見せてもらった犬のカップルって、幼なじみなんでしょ?」
「そうだよ。あの二匹、子犬の時から仲良くじゃれ合ってたよ」
「俺たちと同じだね」龍は照れたように言った。
「犬の世界では、結構ありがちなんだよ。幼なじみ同士の交配。お互いに気持ちも心も許せるからなんでしょうね」
「そうか」
「あの子たちのセックス見て、興奮したの? 龍」
「え? い、いや……」龍は口ごもった。「犬ってさ、や、やっぱり俺たちみたいに、気持ちいいのかな。やってる時」
「訊いてみたことはないけどね」真雪は笑った。「人間より本能の部分が大きいだろうからね。でも、女の子の表情見てると、ちょっとうっとりしてるようにも見えるよ」
「そうなんだ……」
「あたしはいつも、龍と繋がってる時はうっとりどころじゃないけどね」真雪はウィンクして笑った。
「俺も」龍も笑った。「でもさ、さっき最初に繋がってた時、真雪の中がずいぶん広く感じたけど……」
「女の子はね、性的に興奮してくると、中が風船みたいに広がることがあるんだよ。『テンティング』って言うの」
「へえ。そうなの」
「男の子にとっては物足りないでしょうね」
「確かに、自分のものが真雪の中に取り残されてるような感じだったよ。摩擦を感じない、っていうか……」
「あたしの身体が感じてた証拠だよ」
「でもね、何だかあれって優しく包まれてるような感じで、俺、とっても癒された」
「龍、途中で居眠りしてたでしょ」
「え? 気付いてた?」
「余裕じゃん、って思ったよ」
「真雪の中があまりにも心地よすぎてさ」
「かと思えば、後ろから激しく出し入れしたり……。今日の龍って、ちょっと変」
龍はばつが悪そうに数回瞬きをした。
「ごめんね。いろいろ考えちゃって……」
真雪は龍に身体を密着させて耳元で小さく言った。「龍、何かいやなこと、思い出したんだね?」
「え?」
「ごめんね、あなたに、まだ辛い思いをさせてるんだね」
「だ、大丈夫だよ、真雪。俺、もう、ちゃんと……」
真雪はそっと龍の頬にキスをした。そして微笑みながら彼の額に柔らかく人差し指の先をあてた。
「安心して。あたし、ずっとここにいるから。約束する」
「真雪……」龍は少しぎこちない微笑みを返した。
「それに、」真雪は自分の額を指さした。「あたしのここには、ずっと龍しかいないよ」
「うん」龍はにっこり笑った。
「龍……」真雪は目を閉じて、龍の胸に頬を寄せた。
出し抜けに龍が言った。「俺、腹減った。何か食べない?」
真雪は頭をもたげた。「うふふ……。いつもの龍に戻ったね」
真雪は身体を起こしてショーツとブラを身に付け始めた。
「表のコンビニに行って、何か買って来ようか」
「うん。そうだね」
龍もベッドから降りてバッグから着替えを取り出した。
2013,6,23初稿発表 2013,8,9改訂
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