Twin's Story 外伝 "Hot Chocolate Time" 第1集
第4話 男同士タイム
!!WARNING!! 男性同士の性的表現があります
ケンジ、ケネス共に二十歳。1月のある日。
「こうしてケンジと酒が飲めるようになるやなんて、感慨無量やな」
「そうだな。しかし、俺たちもつき合い長いよな」
「ほんまやな」
ケンジは現在大学二年生で帰省中。ケネスは『Simpson's Chocolate House』の跡継ぎとして、ショコラティエの修行中。二人は、二十歳になって初めて酒を酌み交わすのに、街の小さな居酒屋を選んだ。
「済まないな、ビジネスホテルまで予約してくれてたんだな」
「ああ。おまえと二人きりで夜通し語り合いたい、思たからな」
ケンジは少しうつむいて言った。「マユは、どうしてる?」
「健太郎と真雪、二人の育児の真っ最中や。短大の修論は済んだから少しは余裕でたみたいやけどな」
ケンジの双子の妹マユミは、ケネスと結婚し、十二月に出産したばかりだった。生まれた双子の兄妹はそれぞれ『健太郎』『真雪』と名づけられた。
「いいのか? おまえ、こんなとこで俺と飲んでたりして」
「マーユに勧められたんや。たまにはケン兄と飲んで、語り合いなよ、言うて。それに、おかんもいるしな。赤んぼの世話は、今日はおかんにも手伝うてもうてるはずや」
「そうか」ケンジはジョッキを煽った。「赤ちゃん、二人とも元気なんだろ?」
「お陰さんでな。検診でも異常なしや。二人ともちょっと小ぶりやけどな」
「双子だからな。明日あたり会いに行ってもいいか? 二人に」
ケネスはにっこりと笑った。「ええで、もちろん。めっちゃかわいいで、おまえに似て」
「なんだよ、俺に似てって」
「おまえ二人の伯父さんやないか」
「そうだけど」
「マーユにも会うてやり。久しぶりやろ?」
「そうだな」ケンジはテーブルの枝豆に手を伸ばした。
海棠ケンジとケネス・シンプソンは高校以来の親友同士。ケネスと結婚したマユミはケンジの双子の妹だ。
実はケンジとそのマユミとは、高校二年の時から禁断の恋愛関係にあった。兄妹でありながら、二人はお互いの身体を求め合い、繋がり合う関係だった。そしてそれは去年、ケンジが大学一年生の冬まで続いた。
ケンジとマユミは強く想い合っていたが、兄妹という障壁に阻まれ、泣く泣く別れざるを得なかった。その冬、最後の夜を共にしたケンジとマユミは、その後しばらく傷心の日々を過ごしていたが、ケンジと共にいつもそばで見守っていたケネスと、マユミは結婚することを決心したのだった。一方ケンジは、大学で親身になって心配してくれていた先輩の兵藤ミカと、最近交際を始めたばかりだった。
★ケンジとマユミの禁断の関係についてはこちら→基礎知識『海棠兄妹』
ケネスもジョッキを煽った。「おまえは、誰かいい人見つけたんか?」
ケンジは照れくさそうに笑った。「年末の、俺の二十歳の誕生日に告白された」
「へえ!」
「二年上の先輩」
「年上かいな。で、おまえつき合うとるんか? その先輩と」
「う、うん。でも、マユとの恋愛期間が長かったせいで、俺、始めはあんまり積極的になれなかった」
「『始めは』っちゅうことは、今は積極的になった、っちゅうことやろ?」
「あ、ああ……」ケンジは少し赤くなってまたジョッキを煽った。
「最後まで、いったんか?」
ケンジはだまってうなずいた。
「そうか。誠実なおまえがそこまでの気持ちでおるんなら、真剣なつき合いっちゅうことやな。大切にしてやりや、その先輩」
「うん」
★ケンジとその先輩ミカとの初体験の話はこちら→外伝第2集第3話『契りタイム』
◆
「なかなかいい部屋じゃないか」ケンジはドアを開けてそのホテルの客室を見回した。
部屋はツイン。質素だが清潔で快適な空間だった。
「飲み直そうや、ケンジ」ケネスはコンビニの袋からワインのボトルを取り出した。「しかし、ケンジもワイン飲めるやなんて、ラッキーやった」
「けっこういけるよ。初めて飲んだ時からうまいって思ったからな」
「わいも親父やおかんが飲んどったから、当たり前のように飲めるようになっとったわ」
「おまえフライングしたのか?」
「せえへんて。そやけど、わいの誕生日6月やろ? そのスタートからは結構飲んでるで、両親といっしょに」
「そうか。マユも?」
「いや、マーユも飲めんことはあれへんねけど、今は授乳中やから控えてるわ」
ケネスは客室にあった二つのグラスにその赤い酒を注ぎ入れた。
「乾杯や。先輩との幸せな日々を祈って」ケネスがグラスを持ち上げた。ケンジもグラスを持ち、ケネスのそれに軽く当てた。「ありがとう。お前たち夫婦、それに二人の子どもの幸せも。乾杯」
ボトルが空になった時、夜中の零時を回っていた。
「ケニー、シャワー先にいいぞ」
「そうか。ほな」ケネスは着替えを持ってシャワールームに入った。
ケネスと交替でシャワーを浴びたケンジが、シャワールームを出た時、ケネスは黒いビキニの下着姿のまま、ベッドに寝転んでいた。
「なんだ、テレビでも見てればよかったのに」
「わい、あんまりテレビ見いへんねん。こないやって、ぼーっと妄想しとる方が快適なんや」
「何だよ、妄想って……」ケンジは髪をタオルで拭きながら笑った。「しかし、おまえの身体、相変わらずかっこいいな。高校ん時からほとんど変わってない」
「ケンジもやんか。ま、今でも現役やからな。当然やな」
ケンジも同じような黒い下着姿だった。
ケネスは頭を掻きながら言った。「ケンジ、頼みがあるんや」
「なんだ?」
「わいを抱いてくれへんか?」
「ええっ?!」
「前にも言うたことあったけど、わい、バイやんか。ほんでおまえのカラダ見てるとな、抱かれたくなんねん。ケンジはいやか?」
「い、いやじゃ……ないけど……」ケンジは赤くなってうつむいた。
「おまえがいややなかったら、抱いてくれへんか? わいを」
ケネスはベッドから降りて立ち上がった。
「ど、どうしたらいい?」
「わいのカラダを女や、思て好きにしたらええ」
「いや、俺、おまえを男として抱きたい。それでもいいか?」
ケネスはにっこり笑った。「ほんまに? ええで。もちろん、その方がわいも」
ベッドに横たわったケネスのカラダに、ケンジは自分のカラダを重ねた。そして彼の唇を自分の口で塞いだ。甘いチョコレートの香りがした。
二人のキスは次第に激しさを増した。唇を吸い、舌を絡めながら、ケンジとケネスは次第にカラダを熱くしていった。
全裸になって抱き合った二人は、お互いの秘部を擦りつけ合った。
「ああ……」ケンジが甘い声を出した。ケネスは、ケンジを仰向けにすると、大きく反り返り、いきり立って脈動しているものを出し抜けに咥え込んだ。
「ああっ!」ケンジは慌てた。「ケ、ケニー!」
ケネスはケンジの腕を押さえつけ、ペニスを咥えたまま、頭を激しく上下させた。「う、うああああっ! ケニー、ケニーっ!」ケンジの身体の中の沸騰したものが一気に噴き上がり、ケネスの口の中に激しくほとばしった。
「あああああっ!」
ケネスはその熱い液を口から漏らすことなく、ごくりごくりと飲み込んでいった。
「ケ、ケニー!」ケンジは上半身を起こした。
ケネスは少し漏れた白い液が口元に残っていたものを指でそっとぬぐい取り、にっこりと笑った。
「な、なんてことするんだ! おまえ!」ケンジが慌てて叫んだ。
「気持ち良かったか? ケンジ」
「お、おまえの口になんか出させないでくれよ」そして真っ赤になって言った。「す、すまん。俺、我慢できなくて……」
「ええんや。気にせんといて。わい、おまえのん、飲みたかった、っちゅうか飲み込む理由がちゃんとあったんやから」
「理由?」
「聞いてくれるか。ケンジ」ケネスはケンジの肩に手を置いた。
ケンジはケネスと並んでベッドの端に腰掛けた。
「びっくりせんといてな。実はな、健太郎はおまえの子やねん」
「え?」ケンジは思わずケネスの顔を見た。「何だって?」
ケネスは口元に微笑みを浮かべたままケンジを見つめた。
「も、もう一回言ってくれないか? 今、何て言った?」
「そやから、マーユが生んだ双子のうちの男の子はおまえの子やねん」
「な、何だって?!」ケンジはひどく驚いて思わず立ち上がった。
「わいの血液型はAB。マーユはおまえと同じO型や。ほんで、健太郎の血液型もO」
「そ、それって、どういう……」
「まあ座り」ケネスはケンジを元のようにベッドの端に座らせた。「おまえ、マーユとの別れの晩に彼女と最後のセックスしたやろ?」
「あ、ああ」
「マーユはその時、丁度排卵の時期やってん」
「えっ? あの時……」
「そやけどな、健太郎の妹の真雪はA型なんやで」
「え?」
「おもろいことにな、あの双子の赤んぼ、それぞれ父親が違うねん」
「そ、そんなことって……」
「マーユはな、おまえとわい、どっちの子を産むか迷うてたんや。おまえとの最後の晩の前の日、わいはマーユとセックスした。っちゅうか、マーユはわいを押さえつけて、無理矢理中に出させたんや。その時の子が真雪」
「ほんとなのか? そういうこと、ほんとに起こりうるのか?」ケンジはおろおろして言った。
「『異父双生児』っちゅうんやって。マーユの二つの卵子にケンジとわい、それぞれの精子が一つずつ入り込んで、その二つの受精卵がいっしょに育ったっちゅうわけやねん」
ケンジはいきなりベッドから降りて床に土下座をした。「すまんっ! ケニー許してくれ。そんなこととは知らずに、俺! ケニー、済まない!」
ケネスはケンジの頬を両手で包み込み、顔を上げさせた。
「何も謝ること、あれへんて。そもそもわいとマーユはその時まだ結婚してへんかったんやからな。それにわい、かえってほっとしとる」
「え?」ケンジは少し涙ぐんでケネスを見上げた。
ケネスはケンジの腕を掴んで立たせた。「マーユをおまえから譲り受けた時にな、彼女の中にあるおまえへの想いも、いっしょにもろうた。それはある意味、わいも望んでいたことや。わい、ケンジのことも大好きやからな」ケネスはウィンクをした。
「それにな、ケンジを忘れてわいのことだけを想てくれ、なんて酷なこと、マーユにはよう言わんわ」
「ケニー……」
「マーユの中にお前への想いを残したまま、わいはマーユと結婚したんや。そやからな、その証である健太郎も、当然わいは自分の子として、育てるつもりや」
「自分の子として……」
「真雪といっしょに生まれてきたんや。健太郎かてわいとマーユの子やろ?」
「それは、そうだけど……」
「そやからわいは、さっきお前の出した液を飲ましてもろたんや。わいの中におまえの種を取り込めば、健太郎は正真正銘わいの子になるやろ?」ケネスは悪戯っぽくウィンクをして笑った。
ケンジはケネスの目を見つめた。「ケニー……」
「もし、おまえが今、後ろめたい、思てるんやったら、わいの頼み、聞いてくれるか?」ケネスは微笑んだ。
「え?」
「わい、おまえのその逞しい胸にぶっかけたい」
「いいぞ。ケニー、思う存分かけてくれ」
「そうか。ほな、いくで」
ケネスはケンジをまた仰向けにして、腰のあたりに跨った。そしてケンジのペニスを自分のものといっしょに掴んで激しくしごき始めた。
「あ、ああああ!」ケンジは喘ぎ始めた。
「ううううっ!」ケネスも呻いた。
二人のペニスから漏れ出た透明な液が、ケネスの手で擦られる度にぬちゃぬちゃと音を立てた。
「ケ、ケニー、俺、も、もう……」
「イくんか? ケンジ。ええで。わいも、んんんっ!」
二本のペニスから大量の液が噴き出し始め、それはケンジの胸に容赦なくかけられた。
ケネスはケンジの身体に倒れ込んだ。放出された液が二人の身体を密着させた。そして二人ははあはあと荒い呼吸を繰り返した。
「ケ、ケニー……」
「おおきに、ケンジ。わい、満足したで」ケネスはケンジの耳元で囁いた。
「ごめんな、俺だけ二度もイっちまって……」
「かめへんて」
「今度やるときは、俺、おまえの飲むから」
「無理せんてもええ」ケネスは笑った。
ケンジとケネスは同じような黒の下着を穿き直して、一つのベッドに並んで横になっていた。
「ケンジはわいとハダカで抱き合うのん、抵抗ないんか?」
「んー、たぶん、おまえ以外じゃ無理だと思う」
「なんでわいならええねん?」
「何でだろうな。俺にもよくわからない」
「わいもやで」
「え?」
「おそらくな、わいもケンジ以外のオトコには抱かれようっちゅう気にはなれへんと思うわ」
「だけど、おまえバイなんだろ?」
「そやから昔、言うたやろ? 誰でもいいっちゅうわけやないって」
「でも、お前とのセックスは、マユやミカとのセックスと違って、なんか、こう、レクレーション、というか、スポーツを楽しむ感覚だ。どっちかというと」
「そやな。わいもそう思うわ」ケネスはケンジの顔を見た。「ミカさん、っちゅうんか? おまえの彼女はん」
「え? あ、ああ。そうだ。兵藤ミカ」
「マーユと同じようなタイプなん?」
「いや、だいぶ違う。しゃきしゃきしてて、言いたいことも遠慮なく言うし、びっくりさせることも時々する」
「へえ。びっくりさせることって、例えばどんなことやねん」
「ミカ先輩がやったことで、俺が一番びっくりしたのは、俺にコクったこと」
「なんや、それ」
「俺、先輩は絶対そんなことする人じゃないって思ってたからな。まさか俺を選ぶなんてさ」
「ケンジもまんざらでもないんやろ?」
「俺たち同期の間では、ミカ先輩は圧倒的な人気なんだ。だから俺、すごく嬉しかった」
「ほんまに?」
「ああ。後輩の面倒見がよくて、もちろん同期の先輩にも。とにかくすごく頼りがいのある、いっしょにいれば安心できるような人なんだ」
「そうかー。そやけど、ケンジさっきから先輩先輩言うてるとこ見ると、けっこう今も頼ったり甘えたりしているクチやな?」
「そ、それは……」
「いつか紹介してくれへんか?」
「そうだな。是非」
「飲みながらでも、話したいもんやな」
「やめとけ」
「え? なんでやねん」
「ミカ先輩と酒を飲もうなんて、思わない方がいいぞ」
「へ?」
2013,7,27 最終改訂脱稿
※本作品の著作権はS.Simpsonにあります。無断での転載、転用、複製を固く禁止します。
※Copyright © Secret Simpson 2012-2013 all rights reserved
■男同士タイム あとがき■
『異父双生児』というのは、滅多に産まれるものではありません。確率が非常に低いのです。それでも、産まれた双子が似てない、明らかに人種が違う、という場合に、科学的証拠を挙げて裁判沙汰になるケースもままあるそうです。産んだ女性にとっては、間違いなく同じ時期に違う男性を相手にした証拠ですから、普通は非難されたり、顰蹙を買ったりするものなのでしょうが、「Chocolate Time」シリーズの場合は、特殊な事情がありますから、当人のマユミはともかく、周囲が彼女を蔑んだりすることはほとんどありません。しかしマユミ自身には少なからぬ罪悪感があって、不義の子とも言える健太郎本人やその父親のケンジに対する負い目を感じていたことは事実です。それはその健太郎やケンジも違う形で持っていて、特にケンジはケネスへの申し訳なさをこのあとしばらく持ち続けることになるのです。
ところで、後にケンジの妻になる兵藤ミカは大の酒好きで、ケンジは彼女が飲んだ時にはとんでもないことが起こるという危機感を常に持っていました。ケンジはミカと結婚した後も、もちろんケネス夫婦とは親しくつき合っていきますが、実はこの話から十数年後、ミカは成り行きでケネスと肌を合わせてしまうのです! でも、それはケンジ本人やケネスの妻であるマユミも公認の出来事ではありましたが。
Simpson
ホーム|Chocolate Time シリーズ 本編第1期 本編第2期 外伝集|Chocolate Time シリーズ総合インフォメーション