Twin's Story 3 "Mint Chocolate Time"
《2 夏のベランダ》
ケンジはマユミの部屋のベッドに横になっていた。額に濡れタオルが乗せられている。
「……マユ」
マユミはベッドの横から肘をついてケンジの顔をのぞき込んでいた。「大丈夫? ケン兄」
「俺、気を失う寸前だった……」
「ごめんね、ケン兄」
「おまえが謝ることないよ。想定外の事故だったんだから……」ケンジは赤い顔をして、安心したように目を閉じた。
マユミがアリバイ工作を考えている間、ケンジは万一母親に風呂場を覗かれた時のために、湯に浸かり、バスタブの蓋をして、その下でじっと息をひそめていたのだった。狭く暗い空間に首だけ出して、ケンジは自動で湯温調節されるバスタブの湯に全身を過熱され続けていたのだった。シャワーだけでは物足りなくて、入浴は夏でも湯に浸からないと気が済まないというケンジの拘りが裏目に出た形だった。
マユミに声を掛けられた後、半死半生の状態で這うようにバスタブから出たケンジは、ともすれば遠ざかっていきそうな意識の中、湯の中にゆらゆらと漂う自分の出した白い液を、洗面器で掻き出す作業を強いられたのだった。
「エアコン強めにかけてるから、しばらくそうやってじっとしてるといいよ。下からお水持って来てあげる」マユミはそう言い残して部屋を出た。
ケンジはマユミのベッドの甘い香りを嗅いでいるうちに、少しずつ気分が落ちついてきた。そしてゆっくりと起き上がると、下着姿のまま自分の部屋に入って、買い置きしていたチョコレート・アソートの箱を机の引き出しから取り出し、マユミの部屋に戻った。
しばらくしてマユミがミネラルウォーターのペットボトルを手に持って部屋に戻ってきた。ケンジはベッドの縁に腰掛けていた。
「ケン兄、もういいの? 大丈夫?」
「ああ。もうすっかり。本当にごめんな、マユ」
「いいの。気にしないで」
「お詫びに、これ」ケンジはチョコレートを差し出した。
「わあ! うれしい。いつもありがとうね」
「これぐらいしか……できなくて、本当にごめん。夕食作ってもらったお礼にもなんないけど……」
「もう、そんなに卑屈に謝らないで」
「だ、だって今日は食事のこともだけど、湯あたりしてここで介抱されたり、」ケンジは申し訳なさそうにマユミの目を見つめ、その白く柔らかい手を取った。「何より俺、風呂の中で我慢できずに先にイっちゃって、おまえを気持ち良くできなかったってことが、すっごく悔しくて……」
「あたしは平気だって」
マユミはそう言いながら、着ていた白いTシャツを脱ぎ、ショートパンツも脚から抜いてケンジと同じ下着姿になった。
「何かさ、シャワー浴びてるマユ見てたら、どきどきしちゃって……。こんなかわいい女のコとエッチしてもいいのかな、って思ったりした。今さらだけど……」ケンジは照れたようにうつむいた。
マユミはくすくす笑った。「ケン兄、シスコンだったの?」
「……たぶん。真性だと……思う」
「もういいからお水飲んで。ケン兄」
「うん。マユ、ありがとう」
ケンジはマユミが微笑みながら手に握らせてくれたペットボトルのキャップをひねった。
「でもさ、そういう顔見てると特に、ケン兄ってホントにシャイなんだね」
「こ、こんなのをシャイって言うのかな……」
「ケン兄のそれ、実は萌え要素なんだよ」
「萌え要素?」
「そうだよ。あたしの学校の部活の女子、ケン兄のこと気にしているコ、いっぱいいるよ」
「え? おまえのいる水泳部に?」
「うん。あたしマネージャーだからみんなと話すんだけど、身体つきもルックスもいいし、照れてすぐに赤くなるところがいいんだって」
「な、なんでおまえんとこの女子水泳部員が俺のことを知ってるんだ?」
「大会でよく一緒になるじゃん。ケン兄、熱い視線感じないの?」
「大会の時にそんな余裕はないな」
「あたし、大変なんだから」
「何が?」
「ケン兄を紹介しろ、アドレス教えろっていつも誰かに言われるんだよ」
「で、教えてるのか?」
「教えない。あたしだけのケン兄だから」マユミは笑った。「それとも、いろんな女のコと付き合いたい?」
「いや、断る。めんどくさい」
「『めんどくさい』? 何その理由」
「だって、そのコのこと、いろいろ知るのに時間がかかるし、メールが来れば返事しなきゃなんないし、」
「ま、確かにそうだね。それに、」マユミがクスッと笑ったので、ケンジはペットボトルの水をの飲む手を止めた。「何だよ」
「たくさんの女のコと付き合ったりしたら、スケジュールの調整が大変だもんね」
「何言ってんだ。俺、そんなチャラいキャラじゃないからな」
「素質はあると思うけどな」
「マユ、おまえ、俺がそんな風に何人も女子と付き合ってもいいのかよ」
「いろんなタイプの女のコが抱けるよ。高校生の男子としては超おいしい話じゃない?」
「ばかっ!」ケンジは赤くなってまたペットボトルに口をつけた。
「それだよ、それ。その仕草が萌え要素」
「からかうなよ。まったく……」
ケンジは手に持ったボトルをマユミに差し出した。「おまえも」
マユミはにっこり笑ってそれを受け取った。
二人はしばらくチョコレートタイムを楽しんだ。
「ねえ、ケン兄」
「何だ?」
「ケン兄ぐらいの男のコってさ、やっぱりイっちゃうの早いのかな」
「そ、それは……。お、俺の場合、大好きなおまえのハダカ見たり、肌に触れたりしたらもうどんどん興奮しちゃうからな。い、入れたらすぐにでも出そうになる」
「そうなんだー」
「それは俺も悩んでる。俺だけ先にイくのはとっても悔しい。負けた気がする」
「でも、あたし、もうケン兄に抱かれると、いつもとっても気持ちいいよ」
「そうなのか?」
「うん。あたしもケン兄のハダカ見たり、肌に触られたりしたら身体がどんどん熱くなっていくもん」
「へえ。女のコもそんなもんなのか」
「あたしが特別なのかも……ううん、ケン兄があたしにとって特別なんだね」マユミはそう言ってケンジに抱きついた。ケンジはキスを返しながらマユミの背中に腕を回した。
「今日はさ、」マユミが小声で言った。「ベランダでやってみようよ」
「ええっ?!」
「大丈夫だよ。部屋の灯り消せば暗くて外からは見えないよ」
「下に母さんがいるんだぞ」
「その内、ママ、パパを迎えに行くんだって。その時に」マユミはウィンクをした。
◆
「じゃあ、お父さんを迎えに行ってくるわねー」
階下から二階に向かって母親の声がした。間もなく玄関が閉められ、ガレージからエンジン音が遠ざかっていった。
二人の家は住宅地の中にある。二階のベランダから見渡せば近所の家がたくさん並んでいる。当然昼間であれば、それらの住宅の庭や窓からケンジたちの部屋のベランダは丸見えだ。
「でも、もし誰かに見られたりしたら、どうするんだよ、マユ」
「見せつけてやりたい気分」
「おいおい……」
「どれくらいで帰ってくるかな、ママたち……」
「そうだな……車で街まで20分、父さんを拾ってすぐとんぼ返りしたとして最速45分ってとこだな」
二人は部屋の灯りを消して、そっと暗いベランダに出た。見渡すと、遠く近くの家々の窓に明かりが灯っているのが見えた。時折窓を横切る人影も見える。
「もしこっちを見ても、見えないよきっと」
「そうだといいけど……」
マユミが先にケンジにキスを求めた。二人は下着姿でそこに立ったまま抱き合ってむさぼるようにキスを続けた。ぴちゃぴちゃ、とお互いがお互いの唇を味わう度に音がした。ケンジはその場に跪いた。そうしてマユミのショーツをゆっくりと降ろしながら、彼女の腹部から舌を這わせていった。「ああん……」マユミは思わず喘ぎ声をだした。
「マ、マユっ! あんまり大きな声、出すなよ」
マユミはとっさに自分の口を手で押さえ、ケンジを見下ろして大きくうなずいた。
ケンジはマユミのショーツを脚から抜き去り、あらためて舌をマユミの下腹部に這わせ始めた。その舌が繁みをかき分け、秘部に達すると、マユミはことさら強く身体を震わせて喘いだ。そしてしばらくケンジはマユミの潤った谷間を慈しんだ。ケンジの唾液とマユミの中からわき出す雫がいっしょになり、彼女の太股を伝って幾筋も流れ落ちていった。
「ケ、ケン兄、あ、あたしもしたい」マユミは小声でそう言ってケンジを立たせ、自分が跪いてケンジがしたのと同じように彼の穿いていた黒い下着を下にずらしながら、彼のものを口で求めた。ケンジのそれはすでに大きく怒張し、天をさしてビクン、ビクンと脈動していた。
「今度は我慢してね」
「マ、マユ、や、やっぱり俺はいいよ、うっ!」
マユミはケンジの脚に留まっていた下着を脱がせて全裸にした。
「マユー、やっぱり恥ずかしいよ、俺」
「うふふ、シャイなケン兄、もう遅いよ。覚悟して」
彼女は目を閉じてケンジのペニスに舌を這わせ始めた。それは温かく、心地よい感触だった。自分の中に何度も入ってきたその愛しいものをマユミは心を込めて咥え、舌や唇で刺激した。
「う、ううう……マ、マユっ」
マユミは口を離して上目遣いに言った。「気持ちいい? ケン兄」
「う、うん」ケンジは目を固く閉じ、苦しそうな表情でやっと言った。「も、もういいよ、マユ。また俺だけイっちゃうよ」
「そう?」
ケンジは息を荒くしたままマユミを立たせた。そして彼はマユミの濡れた唇を吸い、口のまわりを舐めた。「ごめん、マユ、無理させちゃって」
「無理?」
「お、俺のを咥えるの、実はイヤなんだろ?」
「ううん。あたし好きだよ」
「だ、だってオトコのこれって、グロテスクだと思わないのか?」
「ケン兄のは全然平気。っていうより可愛くて愛しい。頬ずりしたくなる」
「頬ずりって……ほ、ほんとにそう思うのか?」
「うん。そうじゃなきゃそもそもあたしの身体の中に入れさせたりしないよ」マユミは無邪気に微笑んだ。「だから気にしないで。あたし全然無理してないから」
「そ、そうか」
「何ならあたしの口の中に発射しても」
「いやだっ!」ケンジは自分の出した大声に慌てて、両手で口を押さえた。
マユミが眉間に皺を寄せて小声で言った。「そんな大声出す程嫌がらなくたっていいでしょ?」
「ホントに苦手なんだよ、そういうの」
「もう……」
ケンジはマユミを立たせたまま右手で彼女の左脚を持ち上げた。そして、少し身をかがめてケンジはマユミの秘部に、愛撫されますます硬く大きくなった自分のものを宛がった。「入れていい? マユ」
「うん。来て、ケン兄」
ケンジのペニスがマユミの中にぬるりと入り込んだ。
「あ、あああ、ケン兄」
ケンジはマユミの脚を持ち上げたまま左腕で彼女を強く抱きしめた。そしてゆっくりと腰を動かし始めた。
「んっ、んっ……」マユミはまた自分の口を手で押さえ、目を閉じてわき上がる快感に身を任せ始めた。「あ、あああ……」ケンジは急速に興奮が高まりだし、絶頂が間近に迫ってきた。
ガタン。突然近くで大きな音がした。マユミとケンジはとっさに動きを止め、息を潜めてその場に凍り付いた。
「なに?」マユミがケンジに囁いた。「じっとして、マユ」「うん」ケンジはマユミを抱いたまま、様子をうかがった。
にゃーお……。音がした方から声がした。
「大丈夫。猫だったみたいだ」
「びっくりした……」
ケンジはまたマユミにキスをした。マユミは安心したように身体のこわばりを解き、ケンジの腕にその身を任せた。
再びケンジは腰を動かし始めた。
「あ、ああ……ケン兄、いい気持ち……。とっても……」
次第に荒くなる息をマユミの首筋に吹きつけながらケンジは動きを速めた。
「ケ、ケン兄、あ、あたしもうすぐ、あ、あああああ……」
「いつでもいいよ、マユ、イっていいよ」
マユミは両脚を大きく持ち上げ、ケンジの腰に回して締め付けた。そして腕を彼の首に回してしがみついた。ケンジは両腕をマユミの背中に回し、強く抱え込んで身体を揺すった。「ああ、お、俺ももうすぐ……マ、マユ……」
「イ、イって、ケン兄、イって! あたしといっしょに」
「あああああ……、イ、イく、イくよ、マユ、マユっ!」
「ケン兄! あたしもっ、あああああ!」
「出、出るっ!」
びゅるるっ! びゅくっ! びゅくびゅく、びゅる……どくっ、どくっ、どくんどくん、どくどくどくどく……。
ケンジの放出した大量の液はマユミの秘部から溢れ出し、ベランダの床にぼたぼたと落ちた。
◆
「ケン兄の腕力ってすごいね」
「え?」
「だって、あたしを抱え上げたままイけるんだもん」
「そ、そりゃまあ、毎日部活でそれなりに鍛えてるからな」
二人はマユミの一人用のベッドに全裸のまま横になり、ケンジは右手で腕枕をしたまま、もう一方の手で優しく妹の髪を撫でていた。
「マユは?」
「うん。とっても気持ち良かったよ。ケン兄と一緒にイっちゃってたみたい」
「猫のおかげ」
「え?」
「あの時、猫がじゃましてくれたお陰で、俺、もった」
「そうだったんだー」
「実は、またマユより先にイっちゃうのかも、って焦ってたんだ」
「でも、どきどきだったね」
「そうだな」
「向かいの家の窓から誰かがこっちを見てたって知ってた?」
「な、なんだって?!」ケンジは大声を上げた。そしてみるみる真っ赤になった。
「嘘だよ」
「そ、そんな冗談やめてくれよ」
「ごめん。またケン兄の赤くなるとこ見たかっただけ」
「こいつめっ!」
ケンジはマユミの頭を軽く小突いた後、その逞しい腕で彼女をぎゅっと抱きしめた。
「ねえ、ケン兄」
「なんだ?」
「夏休みのうちにさ、一緒に海に行こうよ。泊まりがけで」
「え? 海? しかも泊まりで?」
「うん。せっかくの夏休みなんだし。いいでしょ?」
「で、でも、俺とおまえが二人で海に、なんて母さんたちにどうやって説明するんだよ。思いっきり怪しいだろ。兄妹でそんなこと……」
「あたし水着着てケン兄に抱かれたいな」
ケンジはまた赤くなって、屈託なく笑うマユミの顔を見た。「み、水着……」
「やだー、ケン兄興奮してる?」
「ど、どんな水着着るんだ? マユ」
「新しく買うよ。ケン兄のために。海に行くって決まったら一人で買いに行く」
「なんで一人で? 俺も一緒に行っちゃだめなのか?」
「お楽しみだよ。それにケン兄、レディスの水着売り場に入る勇気あるの?」
「……ない」
「でしょ」
「し、白いの! 白い水着にしてくれないか?」
ケンジが焦ったように言うので、マユミは怪訝な顔をした。
「白い水着? ケン兄好きなの?」
ケンジは大きく頷いた。
「白じゃ透けちゃうよ? もう、ケン兄のエッチ」
マユミは笑ってケンジの額を人差し指でつついた。
「よし、じゃあ何とかして親を騙す方法を考えなきゃな」
その時、ガレージに車が入ってくる音がした。
「灯り消すね」マユミが少し慌てて言った。
「そうだな。寝たことにするか」