外伝集 Hot Chocolate Time 第3集 第8話「初体験をなめるなよ」

《父と娘》

 

 真唯の部屋に連れ込まれた父親の龍は、今さらながらおろおろしていた。

「ま、真唯、お、おまえ本気なのか? ほんとにパパとセ、セックスする気なのか?」

「うん。もう決心したんだもん。教えてよ、愛する娘に」

「だ、だけど、おまえ、こ、これって、その、あの、」

「大丈夫だよ。ママも、豪ちゃんも納得してるわけだから。それにきっと今頃、豪ちゃんとママ、寝室で愛し合ってるわけだしさ」

「そ、そうは言ってもだな……」

「アタシたちもさ、パパ、とんでもないことをお願いしてるってことぐらい、わかってる。でも、豪ちゃんと真剣にお付き合いしたいっていうアタシの気持ちもわかって」

「真唯……」

「アタシ、パパを愛してる。でなければこんなことパパにお願いしたりしなかった。もちろん、豪ちゃんへの想いとパパへの想いは全然タイプが違うものだけど、でも、大好きで、愛してる、ってことは同じなんだ」

 真唯は自分のベッドに腰掛けた。

「パパも座ってよ。ここに」真唯はベッドを軽くぱんぱんと叩いて微笑んだ。

「真唯、パパもおまえを愛してる。でもこうなることは想定外のさらに外だった」

 真唯は笑いながら言った。「そりゃそうだよ。完璧近親相姦だからね」

「パパは、おまえが成長して、思春期を迎えて、恋人を作ることをとっても恐れてた。正直」

「娘を持つ父親の宿命だよね。それって」

「生まれた時からおまえを抱っこして、おむつを替えて、風呂に入れてやって、おんぶして、手を繋いで散歩して……」そこまで言って龍は言葉に詰まり、嗚咽を必死でこらえようとした。

「パパにとっては、アタシはまだちっちゃい女のコなんだね」真唯はふっと笑った。

「……もちろん、いつかこうしてパパたちから離れていく日が来る、とは思ってたけど、実際にそうなると、何だか……な」

「いいんだよ、それで。パパの中ではアタシちっちゃい女のコのままで」

「パパはおまえから死ぬまで離れることはできないよ。気持ちの上では」

「嬉しい。そういうパパがアタシ大好き」真唯は横に座った龍に抱きついた。

「ちっちゃい頃みたいにさ、このベッドでアタシを寝かしつけてた時みたいにさ、アタシを抱いてよ。それなら何となく許せるでしょ?」

「まるでつい昨日の出来事のようだ。あの日々が……」

「パパ……」真唯は自らそっと唇を龍のそれに重ねた。龍は緊張したように目をしばたたかせた。

 口を離した真唯が微笑みを浮かべて言った。「ちっちゃい時に絵本を読んでくれた時みたいに、アタシにいろいろ教えて。大切なこと、いろいろ……」

 真唯は父親の背中に腕を回したまま、仰向けに倒れ込んだ。龍の身体は娘の身体に覆い被さる形になった。

「真唯……」

「教えて、大切なこと……」

 龍は自分のスウェットを脱ぎ、下着一枚になると、真唯のカーディガンのボタンを一つずつ丁寧に外していった。そうして上着を脱がせ終わると、スカートに手を掛け、するりと脱がせた。真唯は下着姿になった。

「安心できる。やっぱりパパは違うね」

「おまえの着替え、いっつもしてやってたからな。思い出したよ。おまえが保育園に通ってた頃のこと」

「パパってさ、ママとの恋愛期間が長かったわけでしょ?」

「まあ、長かったと言えばそうだな。俺が中二の時からつき合ってたわけだし」

「っていうことはさ、パパのセックスのキャリアは中二から今までってことだよね。すっごく上手なんじゃない?」

「言っとくけどな、俺の相手はずっと真雪だけなんだぞ」

「ホントに? 不倫とかしなかったの? 一度も?」

「これから初めて不倫する」龍は照れたように笑った。

「光栄だね。アタシがママからパパを奪った初めてのオンナなんだね」

「初めて、って、これから先、そんなことが二度も三度もあってたまるか」

「安心した。パパにセックス教えてもらえて、アタシ嬉しい」

「できるだけ痛くないようにするからな、真唯」

「大丈夫。アタシ覚悟はできてるよ。痛くても平気。パパが相手なら」

 自ら着衣を全て脱ぎ去った真唯は部屋の真ん中に立っていた。黒い下着姿の龍はベッドの縁に腰掛け、その娘の身体を愛しそうに眺めた。

「真唯、いつの間にかこんなに素敵な女性に成長してたんだな」

「ちょっと恥ずかしいな、やっぱりパパに見られるの。昔は平気だったのに、変だね」真唯は赤くなった。

「そうでなきゃ。恥じらいのない女性に魅力はない」

 真唯は胸と下腹部を手で押さえながら龍の横に座った。

「男の人ってさ、ただ横になってるだけの女の人には萌えないんでしょ?」

「そういうのを『マグロ』という。豪毅みたいに若い時だったらそれでもいいけどな。歳を重ねると、やっぱり同等、って言うか、お互いにアプローチし合うセックスの方が充実するね」

「ママはいろいろアプローチしてくるの? パパに」

「ママは積極的だぞ、なかなか。俺のを咥えて口でイかせることも平気で、それを心地よい、充実感がある、って言い切れるんだから」

「へえ、すごい。でも、それってどんな女の人でも普通にやることなの?」

「誰でもかどうかってことはよくわからないけど、パパはその行為はすっごく苦手なんだ」

「え? どうして? だって、女の人の口で刺激されて、その中に出して気持ち良くなるんでしょ? それって至福の時じゃん。AVでもよくやってるし」

「だめなんだ、それが。俺、真雪の口に出すことに関しては、すっごく罪悪感を感じるんだ。AVみたいに演技でも、たぶん無理だな、俺には」

「じゃあ、あんまりやんないんだ、それ」

「ほとんどしないね。咥えてもらうのは構わないけど、そこに出すのはイヤだね」

「ふうん」真唯は龍の胸にそっと指を這わせた。「ねえ、パパ、」

「うん?」

「横になってよ。アタシ脱がせてあげる」

「そ、そうか?」龍は少し恥じらいながらベッドに横になった。

 真唯は龍が身につけていた唯一のものをあっけなく脚から抜き去った。龍は思わず両手を股間に当てた。しかし、それはすでに、龍の大きな手をもってしても覆い隠せる大きさではなくなっていた。

「手を離して、パパ」

「真唯……、俺、ちょっと……」龍は子どものように赤面しておろおろしていた。

「いいから、ほら」真唯は父親の両手をそっと両脇にどけて、跳ね上がって脈動しているそれを両手で包みこんだ。

「あ、ま、真唯……」

「温かい! 何だかとっても気持ちいい」

「き、気持ちいいって、おまえ……。き、気持ち悪い、とか思わないのか? グロテスク、とか」

「全然。ネットで何度も見たことあるもん。もう慣れた」

「な、慣れたって……。さっきもAVとか言ってたけど、おまえそんなサイト、いつも見てるのか?」

「思春期だからね」

「あ、あんまりいじるなよ。かなり恥ずかしいんだけど」

「パパのこれのお陰でアタシとケン兄、この世に生まれてきたんだよね」

「そ、そりゃ、そうだけど……ああっ!」

 真唯がいきなり龍のペニスを口に頬張った。

「や、やめろっ! ま、真唯っ!」龍は真唯の頭を持って、自分のペニスから無理矢理引き離して慌てた。「だ、だめだ、って言っただろ!」

「えー、大丈夫だよ。アタシパパが出す前にやめるから」

「いいよ、出そうと出すまいと、こんなこと娘にさせるわけにはいかないよ」龍は真っ赤になっていた。

「もう」真唯はつまらなそうな顔をした。

「そ、そんなことは豪毅のにやってやれよ」

「それじゃ練習になんないじゃん」

「いいんだよ。と、とにかく、俺のを咥える必要なんてないから」

 真唯はふふっと笑った。「パパったら、かわいいね、なんだか」

「うるさいっ」

 

 龍と真唯は全裸のまま、ベッドに並んで横になっていた。

「パパはママ一筋だったけど、ママはどうだったの? パパの前につき合ってた人とか、いなかったの?」

「真雪にとっても俺が初めての男だった、って言わなかったか?」

「そうか。そうだったね」

「でもな、」龍は仰向けになり、自分の両腕を頭の後ろで組み、枕にして、まっすぐ天井に目を向けた。「真雪は一度だけ、不倫したことがあるんだ。つき合い始めて、まだ二年目の頃」

「えっ?! ほんとに?」真唯は意表を突かれたように身体を起こし、龍を見下ろした。

 龍はそのまま目だけを真唯に向けた。「彼女の二十歳の誕生日のすぐ後。専門学校の実習で水族館に泊まり込みで行ってた時に、研修の責任者だった妻子ある男性と食事して、お酒飲まされて、ホテルで……」

「そ、そうなんだ……」

「俺たちの交際期間中、最大の危機だった」

「パパ、辛かったでしょ?」

「いや、俺もさ、その時高校一年生だったんだけど、部活の女の先輩に親切にされてる、って無神経にも真雪に電話したりしたから、お互い様って言えばお互い様なんだけどさ」

「でもパパはその先輩と何かあったわけじゃなかったんでしょ?」

「それでもママにとっては、俺からそんな話をされることはすっごく厭なことだったに違いないよ。ある意味俺が彼女の心をかき乱したとも言える」

「ママも……辛かったのかな。パパのことを真剣に愛してた……ってことなのかな……」

「真雪はな、実習から帰ってきた晩に、俺に抱かれながら泣き叫んだんだ。そして何度も何度もごめんなさいって謝った。もうこっちが気の毒になるぐらいに」

「ママ、後悔してたんだね」

「でもな、その数日後のクリスマス・イブに、パパはママと結婚の約束をしたんだ。だから、結果的には俺たちの仲は深まったことになるな。禍転じて福と成す、ってことだよ」龍は真唯を見て笑った。

「すっごく心の広い高一男子だったんだね、パパって」

「真雪は絶対に手放したくなかった。それが最大の理由だな」

「幸せだね、ママ。パパにこんなに愛されて」

「そう。俺は真雪を愛してる。そしてその結果生まれたのがおまえと健吾だ」

「アタシもケン兄も幸せだ」真唯も笑った。「そろそろ練習しようよ、パパ」

「そ、そうだな……」

「もしかして、昔話でごまかして、ちっちゃい時みたいに『じゃあ、もう遅いからおやすみ』って逃げるつもりだった?」

「そ、それは……」

「ハダカのアタシを横にしてても、興奮しないの? パパ」

「ううむ……微妙なところだな。気持ちは父親だから、おまえには娘としての愛しさは感じるけど、身体はさすがに雄だからな、美しい女体を間近にすればちゃんと興奮する」

「良かった。安心した」

「なんでだよ」

「『父親としての娘への愛しさ』だけでも『雄としての女体への興奮』だけでもアタシいやだもん。アタシの身体に興奮しても、ちゃんとパパでいてくれる、そういうバランスだから安心だ、って言ったの」

「変な理屈だな」

「抱いて、パパ」真唯は甘い声で言った。

 

 龍は仰向けになった真唯の身体に覆い被さったそしてそっとキスをした。初めは壊れ物を扱うように、そして次第に情熱的に、最後は大きく温かい両手で彼女の頬を包みこむようにして、口を交差させながら激しく求め合うようなキスだった。龍のそのペースにすっかり呑み込まれて、いつしか真唯も貪るように龍の唇や舌を味わっていた。

 口を離した龍は、真唯の口元を濡らした唾液を指先でそっと拭って微笑んだ。

「す、すごい……。さすがパパ。もう身も心もとろけそうだった……」

「ママもキスが大好きなんだぞ」龍はふっと笑った。そうして彼は真唯の上で身体を滑らせ、口で彼女の乳房を舐め始めた。

 膨らみのふもとから先端へ舌を這わせ、最後に乳首を咥え込んで舌で転がした。「あ、あああん……」真唯は思わず甘い喘ぎ声を上げた。同じ動きをただ繰り返すだけなのに、真唯のカラダは熱くなり、胸はじんじんと痺れ始めた。

「ん……ああっ!」真唯は身体を大きく波打たせた。龍は休みなく舌で真唯の身体を舐め、さらに下に移動させて、まだ生えそろっていない柔らかな茂みをかき分けながら、その直下の初々しい蕾に到達させた。

「ああっ!」真唯はひときわ大きな声を出した。

 龍の舌はその蕾を細かく舐め、谷間の縁を上下に移動した。すでにその谷間からは雫が溢れ出していた。

「パ、パパ、な、なんだか……」

 口を離して龍が訊いた「どうした? 真唯」

「そ、そこに入れて欲しい。パパのを入れて」

「もうちょっと待ってな。できるだけ痛い思いをさせないようにするから」

「い、いいの。痛くてもいいから、入れて、パパ」

「だめ。まずは、これから」龍はそう言いながら、中指を谷間にそっと挿入させた。

「あ、ああ……」

「力を抜いて、真唯。そう、リラックスするんだ」龍は真唯の太股をもう一方の手のひらで優しく撫でた。「骨折の痕、もう何ともないか? 真唯」

「うん。もう全然。以前通りだよ」

「そうか。よかったな、真唯」龍はまた真唯の乳首に唇を当てた。

「ん、んんん……」

 呻く真唯の谷間に、龍は今度は中指と薬指を合わせて差し込んだ。真唯の中はもうかなり潤った状態だった。

「あ、あああ、パパ、パパ、」

 龍はゆっくりと第一関節を曲げて、真唯の内壁を優しくさすった。

「やだ、き、気持ちいい、気持ちいいよ、パパ!」

 龍はその行為をずっと続けた。そして真唯の身体が細かく震え出すのを確認すると、指を挿入させたまま、乳首から唇を離し、もう片方の手で真唯の頭を抱え上げ、また濃厚なキスを娘に施した。その瞬間、真唯は龍の背中をきつく抱きしめ、身体がびくん、と大きく跳ね上がった。それと同時に龍の口の中に大きな息が吹き込まれた。

 龍はゆっくりと口を離し、指を谷間からそっと抜いた。

 はあはあはあ……真唯は大きく肩で息をしていた。

「どう? 真唯、どんな感じだった?」

「すごい、すごかった。も、もう最高に気持ちいい」真唯はまた龍の背中に腕を回した。「今のがイく、っていう感じなのかな?」

「そう。たぶんそうだな」

「パパってやっぱり上手」

「おまえもママと同じ反応をするから、すぐにわかったよ」

「ママを抱いてるつもりでやってもいいよ」

「半分そのつもりでやってるよ」龍は笑った。「まだ身体が熱いだろ?」

「うん」

「よし。その熱さが冷めないうちに、繋がろうか」

「お願い」

 龍は娘の身体を抱き上げ、自分は仰向けになった。そしてその上に真唯をまたがらせた。

「え?」

「おまえのペースでできるポジションだ。ママも大好きなスタイルなんだぞ」

「そ、そうなんだ……」

「ママは乗馬の達人だろ? パパはこうして馬になるんだ」

「なるほどね。文字通り『騎乗位』」

「よく知ってるな、おまえ、そんな言葉」龍は呆れたように言った。

 真唯は恥じらったように父親の顔を見下ろした。「どうしたらいいの?」

「おまえの中にパパのを導くんだ」

「わ、わかった」

 真唯は腰を浮かせ、下になった龍のペニスを手で握った。「えっ?」

「ん? どうした?」

「ゴムがついてる。い、いつの間に?」

「ゴムを着ける間、女のコを待たせるのは、男としてあんまり粋な行為じゃない」

「全然気づかなかった。やっぱりパパってすごいよ」

「嬉しいね」龍はそう言いながら、自分の指を舐めてはコンドームにその唾液を塗りつけた。

「さあ、おまえのペースで入れてごらん」

「うん」

 真唯はそのまま自分の谷間に父親のペニスをあてがった。

「そう、そしてゆっくり腰を落としていくんだ。痛みを感じたらしばらくじっとしてるといい」

 真唯は言われた通りに少しずつ龍のペニスを自分の中に迎え入れ始めた。龍は両手を真唯の腰の両側にそっと当てて、じっとしていた。

 長い時間をかけて、真唯は父親のペニスを自分の身体に埋め込んだ。そしていつしか彼のものは真唯の身体の中に深く入り込んでしまった。

「す、すごい……入っちゃった……。あんなに大きかったのに……」真唯は小さく言った。

 龍は、そうして真唯の狭い空間に押し込められた自分のペニスを、これ以上動かすことが叶わないのではないか、と感じていた。自ずと妻、真雪との若い頃の繋がりが思い出されていた。

「どうだ? 真唯、痛くないか?」

「だ、大丈夫。痛くない。でも何だか不思議な感じ。中から拡げられてるっていうか……」

「じゃあ、自分で身体をゆすってごらん、前後、上下、おまえが気持ちいいと思うように動くんだ。少し前屈みになった方がいいかな」

「うん。わかった」

「パパの胸に手を当てて腕を伸ばして、そう、そのまま。ゆっくりでいいよ」

 真唯は恐る恐る身体を動かし始めた。龍の大きな手はずっと娘の腰にあてがわれたままだ。

 次第に真唯の身体の動きが大きくなっていった。

「パ、パパ、ア、アタシ!」真唯は大きく喘ぎ始め、腰の動きはさらに大きく、激しくなっていった。

「ま、真唯、真唯っ!」龍も顔をゆがめて、襲いかかろうとする快感に耐え続けた。

 二人の身体の熱さもぐんぐんと上昇していく。

 やがて真唯の身体がまた細かく震え始めた。自分の身体の中から湧き上がるものが、もう少しで表面に到達すると感じた龍は、彼女の腰から離した両手で、母親譲りの大きくて豊かな真唯の乳房を強く掴んだ。

「あああっ!」真唯が大きく仰け反った。そしてさらに大きくその身体を上下させた。

「イ、イくっ! 出るっ!」龍が呻いた。

 がくがくがく……。真唯と龍の身体は、同時に大きく硬直し、二人の繋がった部分から発せられた熱が一気に燃え上がって、激しく身体中に広がった。

 

 はあはあと、二人とも大きく肩で息をしていた。

「パパ……」

「真唯……」

 龍は娘と繋がったまま、彼女の身体を抱いて横になり、その愛しい娘、真唯の目を見つめた。

「ごめんな、真唯。パパ、おまえを犯しちまった。近親相姦だし、不倫だし……。もしかしたら性的虐待だったかも……」

「何いってるんだよ、パパ。アタシもパパの妻も合意の上じゃん。それに豪ちゃんも」

「真唯」

「アタシ、とっても気持ち良かった。それに今は、ちっちゃい頃にパパに抱かれてた時みたいな気分だよ」

「そうか」龍は嬉しそうに笑って真唯の頭を撫で回した。

「セックスって、興奮するだけじゃないんだね」

「というと?」

「広く包まれる安心感とか、癒やし効果とか、そんなのを感じてる」

「パパもだよ。真唯」龍はまた微笑んだ。「二十歳以上も歳の差のある娘から身体を癒されるなんて、思ってもいなかったよ」

「フーゾクみたいだった?」

「フーゾクって何だ?」龍はとぼけた。

「行ったことないの? パパは」

「取材したことはあるが、お客になったことは、残念ながらないね」

「パパって、素敵」真唯は父親の大きな体をぎゅっと抱きしめて、その胸に頬ずりをした。

「豪毅とママは、どうたったのかな」

「豪ちゃん、うまくできたかな……」

「きっと豪毅も自信をつけておまえを抱いてくれるよ」

「そうだね。楽しみ」真唯がもう一度龍の大きな背中に腕を回して抱きしめた時、龍のペニスが真唯から抜けた。龍は枕元のティッシュを数枚取って、真唯に渡した。そして自分の分も手に取り、身体を起こした。

「そうだ、ケン兄って、今スミと一緒に部屋にいるの?」

「ああ。おまえたちが帰ってくる前には、もう部屋に籠もってたみたいだぞ」

「上手にできたのかな、スミとケン兄も……」

「初めてだから、そう簡単にうまくはいかないと思うぞ。きっと何かのアクシデントがあったはずだよ」

「なに、パパ、楽しそうに言っちゃって」

「初体験ってのは、そんなもんだよ」

 真唯はベッドの脇の小さなサイドテーブルに載せられた自分のケータイを手に取った。「あ、ママからメールが届いてる」 

「何だって?」

「五分前に届いてる。もうリビングにいるみたいだよ、二人で」

「そうか」

 真唯と龍は軽くキスを交わして、元着ていた服をそれぞれ身につけた。